「the EYE【アイ】」

怖いもの見たさにオススメ


  

続けてシネ・リーブル神戸でもう一本。
香港人だけどタイの映画界で活躍し、天才兄弟とも呼ばれているパン兄弟の新作。前作の「レイン」では耳が聞こえない青年の青春を鮮烈に描いていた。今回は香港の資本も投入され、舞台もほとんどが香港(一部をタイでロケしているけど)。セリフはほぼ全てが広東語。この映画は香港映画と呼んでも差障りはないと思う。

先に公開された東京では、あまりの怖さに映画の途中で退出する人が続出した、とか。ほんまかな? ボクの経験では、あまりのしょうむなさに、途中で帰ろかと思ったり、睡魔に負けて眠ってしまうことはあっても、怖いがために途中で席を立ってしまうのはちょっと考えられない。とりあえず、ボクはこの映画の途中で、席を立とうとは思わなかった。

香港で暮らすマイは二歳の時に後天的に失明。そして二十歳のころドナーが現われて、角膜の移植手術を受ける。そして、視覚を取り戻す。
お話しは、彼女がこの手術を受けた直後から始まる。なんだか、貫井徳郎の小説「転生」のようなストーリー。あっちは心臓移植で、こちらは角膜。
先日観た韓国映画「ボイス」は音で聴覚的に怖さが増幅する映画だったけど、この「the EYE」は視覚に訴える怖さがある。でも、それは単に恐ろしいものや気味の悪いものが大写しになるという種類のものではない。その辺りにこの映画の工夫が感じられる。
それでも、中盤以降は恐怖感というよりも、むしろ「物珍しさ」を感じてしまうのはボクだけではないような気がする。根が真面目ではないボクは「こりゃ、新しい商売が出来る!」なんて、真剣に考えてしまったほどだ。
ボクとしては、マンにその不思議な視覚を「能力」として受け入れて、生きていってもらいたかったんだけどなぁ。そうしたらもっとストーリーが膨らんでいったような気がします。
しかし、香港では商売として風水師や霊払いの祈祷師がやっていける素地があるんやなぁと認識を新たにしました。この作品に出てくる風水のおっさん、どこかで見たことがあるんだけど、思い出せない...。

ボクにとって、最も背筋が寒くなったシーンは、マンとローレンスチョウがKCRに載っているときに、そのすぐ横の窓に幽霊(?)の姿が映るところ。ここはぞぞっとしました!

何を書いても、これからこの映画をご覧になる方の興味を削いでしまいそうなので、詳しくは申しませんが、ありがちなプロットを「見せる」という観点からはよく考えて練られた作品になっていると思います(何だか偉そうな言い方だけど)。
決して「怖くて仕方が無い」(単に怖さだけなら「ボイス」の方が上かな?)ちゅうことはないけど、怖いもの見たさにご覧になるのにはいいかもしれません。そこそこのオススメです。
この映画、スタートの冒頭が肝心。だから、上映開始時間には決して遅れないように! 少なくとも他の映画の予告編が始まるまでには座席についていることをオススメしておきます!

主演のマンを演じるアンジェリカリー(李心潔)、もともとは歌手なんですね。実はCDを持っています。時にはなかなかかわいい。でも、ボクはタイに住んでいたドナーの方がいいかなぁ。ローレンスチョウはアクションものにはあまり向きそうにないけど、ギャグを飛ばさないリッチーレンやチャウシンチーって感じ。二人ともこれからに期待できそうです。

もうしばらく上映しているはずです。梅田では梅田ガーデンシネマ、三宮ではシネ・リーブル神戸。ボクが観たのは、初日の初回。でも、お客さんはたったの10名。もう少しお客さんが来てもいい作品なのになぁ...(まぁ、午前中だし、台風も接近していたから仕方ないか)。

おしまい。