「ラベンダー」

おとぎ噺そのものだ!


  

もう一度シネ・リーブル梅田に戻って香港映画「ラベンダー」を観る。
こちらも満員御礼。いやぁ、凄いね。みんなカネシロタケシのファンなんでしょうか? 女性陣ばっかり、男のお客さんはほんの数人。よっぽどの香港映画迷なんでしょうか、それともケリーチャンのファン?

カネシロくんにピッタリな役柄。この人、ちょっと浮世離れしていると言うか、ネジが一本緩んでいるような役が似合うね(「初恋」の掃除夫なんかほんとに良く似合っていた)。今回は翼が傷つけ空から落ちてきた天使の役。
自分の家のバルコニーにいきなり天使が落ちてきたら、誰でもびびる。ましてやその天使が「ボクは愛を食べて生きている」なんて抜かした日には腰も抜けてしまうよね。

ケリーチャンはアロマセラピーという役どころで、恋人を亡くし、その痛手から立ち直っていない(その恋人の香りが「草原に佇む野牛」っちゅうねんから驚く)。
香港島のセントラルか上環あたりに、かっこいいお店とアパート。
でも、キッチンの戸袋にはぎっしりと日清の出前一丁が詰まっている。彼女の食事はいつも出前一丁(これはポイント高い)。

そんなケリーチャンの所に落ちてきたカネシロ天使と二人の奇妙な同居生活が始まる(この二人って、徹底的に生活感や生活臭って無いよなぁ)。
愛で生きるカネシロ天使は、ケリーチャンの心には悲しみだけで愛がないのに気付くが、どうしたら彼女の心を愛で満たされるのかわからない。そして、何故か彼は靴に固執するのだ。
そんな不器用な二人の不器用な恋の行方は...。

夢の中のようなお店にアパートの一室、夜空に飛んでいく風船、ケリーチャンのお店の常連客...。かっこ良くて、出てくる仕掛けはそれこそ女性好みの「おとぎ噺」そのものだ。
そして、カネシロ天使の傷も癒え、とうとう天国の門が開く日がやって来た。彼は天国へ帰ってしまう。だけど、お互いに心に秘めた思いは切り出せない...。

このお話し、カネシロ天使もケリーチャンも恋に臆病な不器用な二人なんだけど、それに輪を掛けて不器用なのが脚本と演出。
折角の仕掛けや小道具が全然生きていない。惜しいな。カネシロ天使が天使である設定は何? それに彼のような境遇の天使が何人か香港にいるのに彼らの出番があれではなぁ(それにしてもテレンスインのヴァイオリンは酷い!)。
ケリーチャンの心の傷はどう癒されたのかもわからないし、彼女の隣に住むゲイのイーソンチャンっていったい何だったの?
どれか一つでいいからもう少し上手く使うとか掘り下げていればもっといいお話しになったやろうになぁ、もったいない。
それと、唐突に二人でフランスへ行くのも意味不明。まぁ、いいけどね。

それにしてもわからないのがケリーチャン。この人、芝居が上手いのか下手なのか? 大根なのか繊細なのか? ちょっとわからん。また、お色気路線からは遠くにいるとは思うんだけど、どうもなぁ。魅力があるのか無いのか? あの能面のような顔が時折妖しい魅力を垣間見せることがあるだけに、奥が深いと言うか何と言うか...、謎です。

まぁ、お時間がある方はどんな映画か確かめに劇場へ足をお運び下さい。
それにしても、あの二人、どうやって宙吊り状態から下へ降りてきたのかなぁ、謎や!

おしまい。