「ハッシュ!」

人間関係を構築する新しい方法は?


  

後味が爽やかな楽しい映画を観た。
ほんとはこの映画を観る予定はなかったんだけど「面白いですよ」と声を掛けてもらって、のこのことガーデンシネマに出かけていったのだ。今、ガーデンでは「活きる」と「ハッシュ!」が上映されているので、なかなかいいラインアップだ。

特異なキャラクターがうようよ出てきて、映画を観ているというよりも、テレビドラマを見ているような感覚。2時間を超える上映時間もさして気にならない。
ボクが気に入ったのは、カツヒロの会社の同僚OL。この子、ちょっとかわいいのに、ごっつい思いこみが激しくて「こんな子、いるいる」って感じ。
存在感が一番なのは秋野暢子かな、関西のキツイおばさん役がはまっていた。

この秋野暢子が古いタイプの女性の代表格として象徴され、その対極にいるのが片岡礼子演じる朝子だろう。
血縁とか地域や社会との繋がりは希薄でいい、生きていくのに必要最小限の接点でいい。自分に対しても他人に対してもドライな関係を続けていきたいんだけど「子供が欲しい」。そのために必要なことは?

確かに、この映画で描かれている朝子の思考パターンや行動は突飛で「あの女、アタマおかしいいんだよ」と言うことになる。でも、どこか理解出来る部分もあるんだなぁ。
「恋愛とかめんどくさいことは、いいの」なんて言いながら、カツヒロやナオヤとの交際(?交流?)がとても楽しそうだ。

この映画は‘ゲイのカップルに変なオンナが絡んできて子供を欲しがる’という紹介のされかたが多い。でもこの映画が本当に伝えたかったのは「こんな変わった人が増えてきたね」ではなく、人間関係が希薄になっている都会でも、ドライに生きている人でも、人間って孤独で、どこかで暖かさや温もりを求めている、一人では生きていけない、ということではないでしょうか。
人間関係の構築の仕方が、昔のように地縁・血縁に縛られるのではなく、自分の好きように気に入った人間関係を構築する新しい方法を模索している姿を描いているのだと思います。

年齢順に、ナオヤの母親(冨士眞奈美)、カツヒロの義姉(秋野暢子)、朝子(片岡礼子)、同僚OL(つぐみ)、カツヒロの姪。それぞれが自分が属している世代(?、考え方?)を極端に象徴した立場で描かれていて面白かった。

暗くって湿っぽくなりがちな部分も、明るく笑いが満ちたペースでお話しが進んでいくのに好感が持てます。事実、かなり楽しい。まずまずのおすすめ。もうしばらく、新梅田シティ東館4階の梅田ガーデンシネマで上映中です。
しかし、あのスポイトはどこで売っているのかな?

おしまい。