ルポ 貧困大国アメリカ

堤未果 岩波新書 9784004311126



  

子供の頃から読むのは物語りや小説がほとんどで、ノンフィクションや理工学書、ハウツー本などはあんまり読まないけど、たまには昨今流行りの新書を読むこともある。この本も実は別の目的で新書コーナーに立ち寄ったときについでに買った。

で、読み始めると止まらなくなり一気に読み上げた。
この地球上に存在しているヒトは、たった二種類しかいないのだとわかった。すなわち「搾取するヒトと搾取されるヒト」。言い換えれば「ご主人さまとその奴隷」と云っても差し支えないかもしれない。この本にはそういう表現がしてあるわけではないけれど、突き詰めて簡単に言い換えればそうなる。

昨年から経済面どころか社会面をも賑わしているのが、米国の低所得者を対象にした住宅ローン「サブプライムローン」。これは米国国内でのお話しで、ボクには何も関係ないと思っていたけれど、実はそうではない。この問題は、地球上の新しい経済体制化において表面化した事象のごく一部でしかない。それどころか、ボクはここ数年使われるようになった「格差社会」でさえ、対岸にあるものだと思っていた。だけど、それらは大きな間違いだった。

この世の中から「中流階級」は恐ろしい勢いで姿を消している。絶滅寸前だ。その結果、富めるものとそうでないものとの二極化が進行している。富めるものは、有り余る財力をより一層増やすために血眼になり、そうでないものは富めるものの掌の上でひたすらに「消費」という行為を通じてひたすらに踊らされ続けている。踊り疲れたらその瞬間に落伍者となり(極端な話し)死を待つだけの存在に成り下がる。
そんな実例を、「サブプライム」「ファストフード」「医療保険」「戦争」などの項目に分けてわかりやすく解説してくれている。確かに米国でのルポだ。でも、その一部は言葉や表現・手法を変えて日本でも導入されている。もう数年もしたら、日本でも全く同じような光景を目にしてもおかしくない。

警鐘ではない、ましてや予言でもない。これは事実だ(と思う)。

自由競争やアメリカンドリームという言葉が持つ意味が大いに変わっている。折りしも、米国では大統領選の予備選挙が真っ盛り、国を挙げて盛り上がっている。日本では、どんな選挙にしろ投票率が恐ろしいほど低いのが気になる。しっかり見届けておかないと、とんでもないことになる。

う〜。
どうすればいいのだろう?
自分が搾取する側にまわって、それで一安心という問題ではない!

別に必読の書とまでは言わないけれど、読んでみる価値はあると思います。

おしまい。