「ブレイブ・ストーリー(上・下)」

角川書店  宮部みゆき 各・1,800円


  

誰か小説家が言っていた「日本には小説家には二種類いる。宮部みゆきかそれ以外かだ」と。
しかし、凄いなぁ。この本が発売された時も、書店さんにはドドド〜ン!と積まれていた。結構、束(つか)もあるし、上下組の本なのに。
買う気も、読む気もまるで無かったんだけど、職場でこの本を持っている人がいて、借りて読むことになった。結局、持ち主より先に読むことになってしまい、恐縮です。

お話しとしては特にどうってことはない。
何しろ、主人公のワタルが別の世界へ行ってしまうまで(上巻の1/3ほど)が恐ろしく退屈でしょうむない。本を買ったものの、ここまでで挫折してしまう人も多かったのではないか? ボクも挫折しそうになった。
そこをぐっと我慢するとこの退屈なお話しもようやく動き始める。

要するに、ボクの苦手なRPGの小説版なのだ。

ワタルが別の世界に行ってしまってからは、何か宮崎駿のアニメを観ているような感じで読み進んで行ったんだけど、ボクにはどうもこの主人公をここまで駆り立てる「動機」が恐ろしく「弱い」ように思えて仕方なかった。
確かに、小学生のボンにとっては、父親が愛人と逐電し、母親が発狂寸前になり入院することは、凄い衝撃だと思う。でも、これって結局、ワタルは受け入れるしかない。彼が別の世界でどれだけ奮闘したところで、父親と母親は元の鞘に収まることはもうない。悪いけど両親はワタルとは違う人間であり、人格を持った存在なのだから...。
だから、ワタルの奮闘は所詮自己満足にしか過ぎない。そんな風に、いささか醒めた目でこのお話しを読み進めたのはボクだけではないと思う。
作者はもっと別の、単純な動機でこのストーリーを始めるべきだったと思う。

それでも、読ませるのは作者の力量でしょうか。

おしまい。