「転生」

貫井徳郎 幻冬舎文庫 648円


  

読み進めて行くうちに辞められなくなる、そんな作品。
最初に頭に浮かんだのは「この小説は映画に向いている。しかも、邦画ではなく韓国映画に!」。

年末に同じ著者の「慟哭」を読んだ。同じ作者の作品化と思うほどタッチは異なる。「転生」は犯人を探すとか、謎を解くとかに重点が置かれているわけではない(後半になって、やや強引にそっちの方へストーリーが流れて行くけどね)。
読み応えは十分。読後にすっきり感はそうないけどね。

心臓移植を受けた青年が、体調に不安を訴える。それはフィジカルな不調ではなく、メンタルな不調。この不調さを前向きに捉える主人公の青年が爽やかだ。そして不調の原因が移植された心臓にあるのではないかと考えるようになる。
そして、偶然(いや、執念深く?)ドナーの元恋人の女性と出会う...。

美術館、チーズケーキ、ストーカーなど周りを彩るサイドストーリーにも事欠かない、ドナーと言う存在も韓国映画向きだ。是非、韓国で映画化して欲しい。この本を「シンシネ(韓国の映画会社)」に送ってやろうかとすら真剣に考えたほど。
以前母親の編集担当で、現在はフリーライターをしているお兄さん、いつ活躍するのかと待っていたら、そのまま打ち棄てられたのは、ちょっともったいないような気がしました。
仕事中にJR野田駅前の書店で購入。もちろん、スラスラ読めます。いや、途中ではやめられへんでしょ。