「華南(1999年5月)」

華南をめまぐるしく移動する


その1・まず 南寧到着

  

この時はもういっぱしの中国通を気取っていた。一人で中国へ行くのにも少し慣れてきていたしね。
しかし、世の中は広い。もちろん中国はもっと広い、そんな当たり前のことを痛感した旅だった。

関空と広州の往復チケットだけを手にして出発。ホテルの予約も一応入れてある。でも、途中のチケットは大部分をまだ手配していなかった。まだ「怖いモノ知らず」だったからそんなことが出来たのかな? と言っても今回特に恐ろしい目に遭ったわけではないけどね。
どうして、こんな妙なコースにしたのかは、自分でもはっきり憶えていない。あまり普通の人が行かなさそうな街へ行ってみたかったのだろう。
南寧にある「広西民族学院」の担当の先生が優しかったからだろうか。そして東京スカパラダイスオーケストラの曲に「ウーハンの人」という曲があったからだろうか。
でも、きっかけなんてそんなものなのかもしれない。

外国へツアーで行くとき、空港での集合時間は遅くても飛行機が出発する2時間前。ボクは個人で行くときもだいたい2時間前にはカウンターでチェックイン出来るように空港へ向かう。
カウンターでは「窓側をお願いします」と必ずリクエストする。いい年になっても、飛行機の窓から外が見たいから。
で、今回も窓側に座ることが出来た。良かった。
ボクを載せたJD(日本エアシステム)の飛行機はほぼ満席。お昼を少し回った時間に広州白雲空港へ着陸。中国の空港は、地名以外にもう一つ名前を持っている場合がほとんど。広州は「白雲」とは、綺麗な名前ですね。
この空港はボクがイメージしていた空港とはかけ離れており、いささか腰が引ける。もっと近代的だと思っていたのに、垢抜けない中国の地方空港のイメージそのまま(それでも、他の地方空港よりは立派なことが、この後わかりました)。
また、野ッ原に空港だけがあるのかと思っていたけど、空港の周囲は家や低層のビルが建ち並んでいる。
駐機されている飛行機はさすがに中国南方航空(CZ)ばかり。大したものです。

広州では国内線に乗り継ぐ。数時間後の南寧行きに乗ることになっている。
入国審査を済ませ、荷物をピックアップ。そして、ゲートを出るとすぐに両替をする。もうすることがない。でっかいスーツケースを持っているのでうろうろも出来ないしね。
無事にチェックインを済ませ待合室に入る。ここの待合室は恐ろしく複雑な構造になっている。内部は二階建てになっていて、巨大な吹き抜けになっている。二階から下を見下ろすと、何か大きな体育館にいるような錯覚を覚える。それと、自分がどのゲートで待てば良いのかを教えてくれるモニター表示がとてもわかりにくい(いや、ほとんど理解できない)。
これがローカル空港ならゲートの数も知れているからそうでもないんだけど、ゲート数が50以上もあるようなこの空港では緊張してしまう。
中国国内線は搭乗ゲートが開いている時間はほんの数分しかない。その時に目を離していたりトイレに行っていたりすると、もうアウト(この恐ろしい事実は観察していて判明した)。
結局、ゲートの変更はなく無事飛行機に乗り込めた。

南寧という街がどんな街なのか、正直言って事前の情報は何も持ち合わせていなかった。ただ、何と言っても広西省の省都だけにそこそこの都会だろうと想像していた。 ホテルはネットで調べて、FAXで交渉して予約してある。
建物は新しいが、絵に描いたような田舎の空港に到着。ここからはハノイ行きの便も飛ぶ国際空港なのに、田んぼというか原野のど真ん中にぽつんとある。ここからどうやって市内に行けばいいのかはさっぱりわからない。建物(ターミナル?)を出ればオンボロのバスが待っている。飛行機から降りた人が乗り込むので、ボクも恐る恐る載ることにした。運転手にホテルの名前を告げると頷いてくれた(しかし、いまいち自信ないなぁ)。
間もなく出発。広州は曇って蒸し暑かったけど、南寧はきつい南国の陽射しがまぶいしい。今まで見たことがないような、のどかな田舎道をバスは走る。これは空港と駅を結ぶリムジンではなく普通の路線バスのようだ。がら空きの道なのにスピードは出ないし、実にこまめに停車する。まぁ、急いでないからいいけどね。随分西に来ているから、時間の割には陽が長いしね。
1時間ばかりこんな調子でのんびり走る。まだ着いたばかりで中国の思考回路になっていないし、緊張感も高まっていたんだけど、このバスのおかげでだんだん慣れてきた。

いつしかバスは街の中に入り、やがて大きな橋を渡る。この橋を渡ったところがボクのホテルのはずなんだけどなぁ。この橋は大き過ぎて、川の堤を走る道とは立体交差していて、無情にもホテルの前を通過してしまう。
そんなに高層ビルが建ち並んでいる訳ではない。高くてもせいぜい10階以下。しかも混みあって建っていないので、空間が広く感じられる。道もそんなに混雑していない。のんびりムードが漂う。
この高架を降りたところで、運転手が「ここやで」って合図してくれる。随分戻らないといけないが、仕方ない。大きなスーツケースを下げて下車する。
降ろされた場所は割と賑やかな繁華街。タクシーの運チャン(しかもおばちゃん)が寄ってきて何か話し掛けてくるが、これは無視する(イヤ、何を言っているのかわからなかったのだ)。ガラガラとスーツケースを押して歩道を歩く。これで、ホテルの場所がわかっていなければ、焦りまくるところだけど、目標がしっかりわかっているだけに気分は楽。途中のスタンドで取り敢えず南寧の交通地図を買う。体中一杯に汗をかいてようやくホテルに着いた。
さっそく、チェックインをするためにカウンターに。ホテルの人がパスポートを見せろと言ってくる。パスポートを渡して、シートにサインをしていると、ボクの隣りでもチェックインをしている人がいる。彼女の手許をみるとそこには日本のパスポートが。
ありゃ、広州の空港で関空から一緒だった団体の日本人と別れてからは誰にも日本人には会わなかったのになぁ。ホテルの人からは「一緒なのか?」と尋ねられるが、もちろん全然知らない人。顔を見ようとしたら、その子は一緒に来ていた中国人とどこかへ行ってしまった。カウンターにパスポートを置いたまま(ヘンなの)。
通された部屋は恐ろしく天井が高くてとても広いツインルームだった。荷ほどきもそこそこにシャワーを浴びることにした。

つづく