03/25・準備不足できつかった・水落山

偽ピークが次々に現れる...


幾つかの“偽ピーク”を経てようやく到着!

 

正直言って今回の山行は調査不足、準備不足だったのは否めない。
その極めつけは、日本を出発する直前まで、水落山はソウルの南にあると思い込んでいたこと。あかんなぁ。
それに正月以来全く歩いていない。この3カ月のブランクは大きい。筋力落ちてるやろな、きっと。

水落山(スラクサン・637m)はソウルの中心部から見て、東北の方角にある。大まかに言うと、昨年末に歩いた北漢山とは谷を挟んで向かい側(東側)にある。あの日、北漢山から見えた日の出は、この水落山の方角から上がったはずだったのに、そのときはそんなことも知らなかった。
地下鉄の7号線に、その名も「水落山」という駅があり、この駅がそのまま登山口に直結しているのはとっても便利。ソウルの中心部から「水落山」駅までは、およそ1時間ほど見ておいてください。
通勤時間帯にはまだ少し早い時間だったし、郊外へ向かう逆方向だったので忠武路から楽々座れた。逆の上り方面はもうラッシュが始まっていたけどね。
市内からだと進行方向前側にある1番出口が登山口に向かう出口。1番出口を上がって、国道沿いに進み、点滅信号を含めて3つ目の交差点を右(東)に折れると後は一本道。

地下鉄の駅から地上に出ると、空気が冷たい。薄着すぎたかな。それに見上げる空は今にも泣き出しそうなどんよりとした曇り空。しまったなぁ、合羽も傘も部屋に置いてきてしまったょ。
早朝の水落はひっそりとしていた。まだ薄暗い街をとぼとぼと歩き出す。先行者がいてくれたら安心できるんだけど、誰もいない。このままで大丈夫なの? なんか自信ないなぁ。

すぐに沢に沿ったコースになる。雰囲気はハイキングコースのそれになったので、ちびっと安心して歩みを進める。
誰もいないコースはたちまち静かになり、クルマの騒音も遠のく。空気も澄んで冷たい。途中、売店もあるけれど、まだ囲いが固く閉ざされ、山の中はまだまだ冬の趣き。コース沿いの落葉樹は葉を落としたままで、針のような枝を天空に突き出している。
一つ目の橋の手前に東屋があり、ちょっと休憩。何しろ運動不足が響いて、そんなに歩いていないのに息が弾んでいる、ついさっきまで寒かったほどなのに、もううっすら汗もにじんでいる。ここで入念な体操とストレッチで身体をほぐし、筋を伸ばす。靴紐を締め直し、スパッツをつける。もう、フリースは脱いでも大丈夫だろう。温度計を見ると5度を割るくらい。
さぁ、ここからがスタート。幾つかの橋を渡るたびにコースは次第に山道らしくなり、いつの間にか林に囲まれ、山の裾野に取り付いたことになる。コース上にある落ち葉は、どれもよく踏まれてこなごなになっている。きっと人気のコースなんだ。よく歩かれている。

ふと歓声が上から降ってきた。人がいるんだな。
もう少し歩くと、そこはちょっとした運動広場になっていてバトミントンコートがある、どうしてここにバトミントンのコートなのかは謎だ。少年団の子供たちが練習しているのかと思ったら、10人ほどのアジョシとアジマがバトミントンを楽しんでいた。しかも、かなり真剣。何もこんな山の中ですることもないような気がするけどね。ここにはこの他にも卓球台や各種の器具があり、誰が使うのか知らないけど、一通りのトレーニングが出来るようになっていた。

もう少しがんばると分岐点。コースだけではなく、谷の出合にもなっている。ボクの持っているガイドブックによるとここを右手に取って稜線に取り付き、そこからピークを目指すようだ。
右手に進むと、心なしか踏み跡が細くなったような気がするけれど、明瞭だから大丈夫でしょう。ここからは一気に急登。岩だらけの小径を伝うように歩く。当然、息は切れ切れ、あえぐように歩く。
冬の間サボっていたからなぁ、まぁ仕方ないんだけど。もうアカンとかバテバテというのではなく、フィジカルに身体があかん。足の筋肉が悲鳴を上げている。全身から汗が吹き出す。顔にも汗の雫が流れ、それがメガネのレンズにぽとりと落ちた。メガネに汗が落ちるなんて、いったい何時以来だろう?

振り返ると、駅前にあったマンション群が既にかすんでる。遠くにはうっすらと北漢山のシルエット。心なしか空は明るくなってきたかな。雨の心配はもうなさそう、良かった。
沢の流れの水音、ボクの歩く靴音、そして吐く荒い息。山は静かなようで、それなりに音に満ちている。
見上げると、沢をふさぐように直径が20メートルはあろうかという巨大な丸い球状の岩がドッカーンと鎮座している。これは凄い岩だ、遠くから見ていたら人工的に作ったかのようにも見えるけれど、近くで見るとその荒っぽい岩肌は人が手を加えたものではないのがわかる。
この岩の根元に水が湧いている。近くには標識もあり、どうやら検査の結果「安全です(飲めますよ)」という表示。ここが水落山の「聖水」なのか。プラスチックの柄杓が何本も置いてある。
こんこんと湧いているわけではなさそうだけれど、小さい水場の水は澄んでいる、手を浸すと切れるように冷たいのではなく、ほんのりと冷たい。リュックを下ろしてしばしの休憩。

“チェットリ、チェットリ、チェ、チェ、チェ、チェ....”ずっと聞こえている鳥の鳴声。鳩ほどの大きさでじっとしているときは白黒のツートンカラー。歩く姿はカラスのようで、飛ぶ姿はちょっと独特。翼を広げると割りと鮮やかなブルーの羽も目に入る。名前は知らないがこの鳥が“チェットリ”と啼いているように聞こえて仕方ない、チェットリとはハングルで灰皿。ハイザラドリと名付けようか(その後の調査でこのトリはカチガラス(カササギ)と判明しました)。
もう少しで鞍部。前方の空が大きくなってきた。ガサガサと音がしたかと思うと、リスがちょろちょろ動いている。北漢山でも見たタイプのリスだ。そろっと荷物を下ろし、カメラを構える。冬眠から覚めたばかりで、まだ寝ぼけているのか、動きが緩慢。がさがさ、ごそごそ...。

ようやく、よく踏まれた鞍部に到達。思ったよりきつかった。準備不足と慢心が原因。ここでようやく、降りてくる人と出会った。まぁ、軽装だ。片手に水が入ったペットボトル、もう片手にタオルを持っているだけ。この出合を左(北)に取る。少々のアップダウンはあるけれど、基本的に登りは終わり。ここですっかり気が緩んでしまったのかなぁ。
この稜線上には幾つものピークがある。この岩をよじ登ればそこが水落山のピークなのか、そう思って何回もアタックするんだけれど、その岩に立つとさらに奥にピークがあるのが見える。はぁ、すっかり息が上がってしまう。それにこの稜線上は意外と厳しくて、何箇所もロープ場がある。手袋をお忘れなく!
もう騙されない、そう思っているのに、また違った。そしてようやく汚いテントと掘っ立て小屋があるピークに到着。なんだか、達成感や到達感からはほど遠いなぁ。あぁ、精神的に良くないね。いや、これはボクの調査不足のせいでしょう。ちゃんと調べておけば良かった。

記念撮影をして、早々と退散することにする。
その間にも夫婦連れのハイカーが上がって来た。挨拶を交わす。
そう言えば、すっかり空は晴れ上がっている。背中に受ける陽射しが温かい。いや、もう汗だくだから「暑い」ょ。

帰りはバリエーションルートを取る。この稜線から途中の分岐まで、一気に下るコース。ほとんど歩かれていないようで、踏み跡は不明瞭(と言うか廃道同然)。このルートは99年まで自然休息期間に充てられていたようだ。
危なっかしいけれど、何とかなりそう。上がってくるのもきつかったけれど、一気の降下もなかなか厳しいものがある。
ふと、息を入れていると、今度はカサカサっと小さな音で乾いた落ち葉が揺れる。目を凝らすとそこのは小さな褐色の野ネズミが顔を出している。暫く彼とにらめっこ。顔の大きさは3センチもないほどか、不思議そうな顔をしてこちらを見ている。カメラを出そうとボクが動いた瞬間。彼は枯葉の中にもぐりこみ、姿を消してしまった。

下から話声が沸いてくる。何人かのパーティの賑やかな声。グループで上がってきたのかな。と、そこは先ほどの分岐よりかなり上がった箇所。下から見て分岐を左に取るほうがポピュラーなコースのようだ。
ここでこのコースと出合い、目を見張った!
続々と人が歩いてくる。4、5人のグループもあれば、二人組み、もっと大勢のグループもある。そのほとんどは中高年の女性。ありゃぁ、これはシーズン真っ盛りの六甲の比ではない。どんどん、どんどん、来る、来る。びっくりした。
当然、皆さん今からピークへ向かわれる方ばかりで、ボクのようにもう降りる人はいない。
分岐を過ぎ、コースの左右に置いてあったベンチにも人が一杯。売店があったあたりまで来ると、お店はしっかり開店していて、ちょうどお昼時だもの、お客さんもそこそこ座っている。なんか、朝とは全然違う光景に目を見張るしかない。中にはジーンズにスニーカーという方もいるけれど、ほとんどの人はなかなか堂に入った装備に服装、そして靴。これだけ大勢の人と出会うと、今ソウルのハイカー達に何が流行っているのか、実に良くわかる。
100人? いや4〜500人はいたでしょう。平日の昼日中にここまで大勢の人が歩いているなんて! 脱帽です。

軽い気持ちで歩くと、とんでもないけれど、気を引き締めて歩けばそんなに大したことないコースです。ただし、ピーク付近には幾つか難所もあるので、靴はしっかりしたものを準備してください。ルートが複数存在しているので、出来れば地図をお持ちになることをオススメします。また、手袋も忘れずにご持参ください。
ソウルの中心部からこんなに近い場所に“静かな”コースがあるとは思いませんでした。この様子だと、季節や時間によっては“渋滞”する可能性もありそうですね。特にいろんなレベルの方が歩きそうですからね。
途中の分岐までに、何箇所かお弁当を広げられそうなベンチや広場が用意されています。そこまでなら、気軽にピクニック気分でOKだと思います。

おつかれさまでした。

 

地下鉄「水落山」駅7:35〜ゲート・大きい案内板7:50〜7:55水落橋8:05〜分岐点8:25〜8:40薬水・巨大な岩8:45〜稜線9:10〜10:00水落山ピーク10:10〜分岐10:50〜11:10〜11:30地下鉄「水落山」駅

 

球状の巨岩の下に湧き出る
“薬水”
ちょっとピンボケ
冬眠あけで寝ぼけたリス君
稜線に連なる岩のピークたち 遙か南には
霞んで佛岩山のシルエット
くすんだ山中に
黄色いマンサクの花が映える