12/31・氷と雪と風と...・北漢山

ソウル都心部から気軽に歩ける本格コース


下山してからウイドンのバスセンターから見上げる
「白雲台(ペグンデ・左側)」ちょっと霞んでいます
右側は「仁寿峰(インスンボン)」

 

暖かい初夏を思わせるの香港から、一っ飛びで直接ソウルへ。ソウルはもちろん真冬。
そして、大晦日にソウル近郊の北漢山(ブッカンサン)を歩いてきました。
この山行も綿密に計画(?)はしていたんだけど、その前夜。遅くになってから急遽「今から飲みましょう」というお誘いを受けてしまい、ホテルに帰って来たのは、なんと午前様。もう、明朝の北漢山は諦めようかとさえ思ったんだけど、せっかくだからね。タイマーをセットして寝る。目が覚めてから考えたらいい。

ソウルに着いてまず、観光公社のカウンターへ直行。まぁ、そんなことはないと思うけど、ひょっとしたら自然休息期間で入山禁止になっているかもしれないし、それに出来れば日本語で書いた地図を手に入れたかった。
ブッカンサンはソウル市の北部に広がる山域の総称で「ブッカンサン」というピークはない。複数のピークがあるようだ。
残念ながら、日本語による地図もパンフもなかったけど、漢字で書かれている書籍のコピーをいただいた。いつもながら、観光公社の本部は親切で助かります(ありがとうございます!)。
ウイドン(牛耳洞)という場所が登山口になっていて、これはいろんなレポートにも書いてある。ここへはタクシーで行くつもりだから、「ウイドンへ行って下さい」というメモも書いてもらった。ボクの発音では、例え地名であっても上手く伝わらないことが多い(もっとも、地名でなくてもほとんど通じないんだけどね)。

さて、6時前に時計のベルが鳴り響き、唸りながら目覚める。日本で飲むチャミスルはへべれけに酔うのに、ソウルで飲むと目覚めが爽やかなのは何故だろう?
急いで着替えて、湯を沸かし紅茶を用意する。ザックは前夜のうちに準備してある。
まだ朝の気配すらない6時半、ホテルの前に待っていたタクシーに乗り込む。ホテルのエレベータに表示されていた外気温は−4度だった。
ホテルからウイドンまで、道はガラガラだったけど30分以上かかった。ウイドンに着いても、あたりはまだ暗い。でも、ここで降りるわけにはいかない。運転手に頼んで、ゲート(登山口)まで行ってもらう。でも、道はどんどん暗く、細くなり、運転手はびびってしまい、途中の駐車場のゲートで「ここまでしか行かない!」と降ろされてしまった。
仕方なしに降りると、外は寒いよ!
アスファルトの急坂を歩き始める。10分も歩くとだんだん明るくなってきて、朝の気配が漂いはじめた。すると、ちょっとさみしいゲートが現れた。ちょっとした駐車場と2、3軒の店。その先が入山料を払う登山口になっている。
春のソラクサンでは入山料を払わなかったので「今回はちゃんと払う」と意気込んでいたけど、窓口は閉まっていて人影もない(こんな時間に当たり前か)。朝早く来ると、払わなくてもイイみたいです。
ベンチに腰を降ろして、スパッツをつけ、準備体操。そして最後にタバコを一 服。韓国の国立公園内は完全に禁煙です。

最初は石で組まれたコース。いきなりの急登に10歩も行かないうちに息が上がる...。
あれっ、調子出えへんなぁ、と思っていたら、なんのことはない。靴の紐を締め上げるのを忘れていた。あかんなぁ。まだ酔っているのかな?
しっかりしたコースが続き、ちょっとキツ目の上りだけど、大したことはない。林の中のコースを軽快に歩く。迷いようもないほど、しっかり整備されています。
振り向いて、歩いてきた道を見下ろせば、遙か遠くに、ガスに霞んで朝日が上がろうとしている。初日ではなく、終日だねぇ。
身体はだんだんと暖まってくるけれど、指先や足先はちっとも暖まらない。それに剥き出しになっている顔は刺すような冷たさ。温度計を見ると−10度近くまで下がっている。そりゃ寒いはずだ。
ガンガン登るコースに嫌気がさしてくる頃に、売店兼山小屋が見えてきた。ここでようやく人の姿を見た。ここにも大きな温度計がある。−8度。やっぱりなぁ、見るんじゃなかった。
ここから先、急に白いモノが増える。それは雪でもなく氷でもなく、いやらしくコースにへばりつている。雪が降り、積もり、溶けて、凍る。それが何回も繰り返された結果。それが見ているだけならいいけれど、その上を歩くのは「怖い」以外のなにものでもない。ツルツル。軽アイゼンを着けようかと何度も考えるが...。コース上は剥き出しの岩とこのツルツルが交互に現れてなかなか踏ん切りがつかない。そうこうしているうちにぽっかり稜線に出た。
左手には立派な岩を抱いたピークを見上げる。あんなとこに上がれるのか(上がれません)?

このあたりはちょっと谷筋になっていてる。すぐにもう一軒の山小屋風の建物とキャンプサイト、それにお寺。
さすがに年末だけあって一張りのテントもないけれど、ごっつい荷物を背負った女の子が一人いる(何してんのかな?)。それと、山小屋からは管理人風の中年のおっさんが顔を出す。何やら言っているので「おはようございます」と大声で答えておいた。お寺には人影はないが、煙突から煙がもうもうと出ている(お寺という漢字の看板がなければお寺とは気が付かないと思う)。
がらんとしたキャンプサイトを通り過ぎると、さっき見えた岩のピークは「仁寿峰(インスンボン)」だと標識が出ていた。北峰山は五つのピークの集合体で、今日ボクが目指しているのは最高峰の「白雲台(ペグンデ)」で、837mある。ここから見る限りでは「ほんまにあんなとこ上がれるのか?」って心配してしまう。

またも急登。高度を稼ぐごとに風が、冷たい風がびゅんびゅん吹いてくる。
これだけ歩いているのにちっとも暑くならない。フリースも着たまま。逆に指先は冷たくなるばかり。
そうこうするうちに石垣が目に入り、その石垣が城壁であることがわかってくる。この美しく復元された城壁がコースと白雲台との分岐になっている(と表示板に書いてあった)。門をくぐらずに右に行くとピーク。見上げると、ちょっと尻込みしたくなるなぁ(上手く表現できないけど)。
岩壁に強引に手摺りとロープが渡してある。岩には窪み(ステップ?)があり、そこには例の白いヤツがへばりついていて、自然と腕に力が入る。しがみついて一歩一歩進むしかない。早朝にもかかわらず、先行者が一人、見下ろすと小学生のほどの男の子を連れたお父さんもいる。
あんな子供も歩くなら、ボクも歩ける(ここで引き返す訳にはいかない!)。

山頂手前に大きな岩のテラス(テラスだけが岩ではなく、ここはもう岩しかないんだけどね)。取り敢えず一息入れる。怖いほどびゅんびゅん風が吹きつける。山頂にテグッキ(大極旗=韓国の国旗)がはためいている。
へっぴり腰で進む。ぐるっと岩を回る感じでようやくここがピーク。
狭いし、風が強いし、それに怖い。急いでカメラを取り出し記念撮影。
達成感とか到達感とかは「ない」。

上がることより、降りることの方が怖いのは知っていたつもりだったけど、浅はかなボクは「忘れていた」。
もっとへっぴり腰でしがみつくように直下のテラスへ戻る(ここは比較的風が当たらない)。「ふぅ、生き返った」と一息入れる。ザックから熱い紅茶を取り出す。先行者のおっちゃんは、なんとソジュを飲んでるよ。寒いもんなぁ。
一息入れて、ソウルの風景を目にする。前衛山が邪魔して市内は見えない。それにガス(スモッグ?)がひどくてよく見えない。ここからは東側が見えるわけだから、ソウル市内ではないはず。しばらくすると、お尻が冷たくなってきた。おっちゃんに声を掛けて先に降りる。

「行きはよいよい...」帰りは難渋を極める。
ロープにしがみつてへっぴり腰でいると、さっきボクの気持ちを後押ししてくれた親子が元気に上がってきた。いやぁ、子供は身が軽くていいねぇ。

ほうほうの体で城壁まで戻る。ここからは普通の山道。「龍岩門(ヨンガンムン)」まで気楽に歩けます。岩ではなく土のコースだから白いモノもないしね。このコース上では実に多くの方に出逢った。
「龍岩門」からは道洗寺( ドソンサ)までは一気の下り。森の中のコースで気持ちいい。小鳥やリスが多いね。気温も幾分は上向いて来たようだ。途中何度か休憩しながらのお散歩コース。さっきの恐怖心はどこへ行ったのやら。静かで素晴らしい散策が楽しめました。
道洗寺脇にあるゲートに辿り着く。思っていたより立派なお寺。参道を下っていくと、すぐに行きしなのメインゲートに着く。ここには道洗寺のバスが待っていてウイドンまでピストン運転しています(無料)。これに便乗させていただき、ウイドンのバスターミナルまで。ここは多くのバス路線の始発駅になっていて、お帰りのコースにあわせて乗車することができます。
ボクは東大門市場までこのバスに乗って戻り、そこからタクシーに乗り換えてホテルに戻りました「お腹すいた〜!」
(この日のうちに関空に戻り、翌朝。腕や肩がぱんぱんに張って痛い、痛い。そんなに力を入れてロープを掴んでいたとは...。)

おつかれさまでした。

 

ウイドン駐車場7:20〜7:30ゲート7:40〜売店兼山小屋8:10〜山小屋・キャンプサイト8:35〜9:05ピーク9:15〜峠9:55〜龍岩門10:10〜10:40道洗寺ゲート

 

このロープだけが頼り 山頂には大きな岩
稜線に連なるピークにも
白いモノが
美しく彩られた道洗寺( ドソンサ)