「チャップリンの殺人狂時代」

20/Aug./2003

  

さて、続けて「チャップリンの殺人狂時代」1947年の作品。時代は第二次世界大戦が終結してすぐですね、チャップリン58歳の時だ。
この作品では、ステッキや帽子をかぶったお馴染のチャップリンスタイルではなく、まったく普通の紳士姿での登場です。

フランスのある町。
おりしも不況で、30年務めてきた銀行をクビになったヴェルドゥ(チャールズ・チャップリン)が主人公。彼の現在の仕事は、中年女性を誘惑しては結婚し、相手を殺害して保険金をせしめるという「殺人鬼」。偽名を使って次々と女性に近づいては殺し、死体も残さぬようバラバラにして焼却する用意周到さ。しかし、そんな彼も家では、脚を悪くしている妻と息子がいる良き父親でもあった。

お話しは、このヴェルドゥの活躍ぶりを描いたサスペンスちっくな話。あっちへ行っては騙し、こっちへ行っては殺し、いままでのような喜劇でもないまったくもってフツーのお話なのだ。シーンが移動する度に汽車の走るカットが使われているのがなんともストレート。
そして、お話しはヴェルドゥが詐欺師&殺人鬼ぶりを発揮する姿を描いていくが、街で出会った未亡人の若い女性の同情し、殺すのをやめるというドラマな部分もある。そして最後に彼はとうとう警察に捕まってしまうことになる。

「ひとり殺せば悪党で、100万人だと英雄」。ヴェルドゥが捕まった後、裁判のシーンで言う台詞。戦争で大量殺戮するという事業に比べれば、自分のやったことは小さな事業過ぎないという皮肉だ。
でも、それにしてはちょっと的外れなんじゃないかな? なんて思ったり、この一言のために延々長いストーリがあったのかと思うとちょっとね。
チャップリン喜劇を観に来ていた人にとっては、この上ねなく眠たい映画だっただろう。事実途中退場する人もいました。ラスト前のドタバタ喜劇はそれなりに楽しませてくれましたけどね。
最初からこんなノリで話を進めてくれればそこそこ楽しめる映画だったと思うのですが...。

ちょっとメッセージ色の強い作品。
当時のアメリカは大戦での大勝で沸いていた時代。戦争を批判するチャップリンは非国民の共産主義者として大衆からも批評を浴び、各地で上映中止の運動も行われたとか。
当時の映画がどういうものだったのか、他の作品を観たこともないのでなんとも言えませんが、まぁチャップリンという名前が無ければ観ることもなかった作品なのかもしれませんね。

次回はまだチャップリン映画祭。