「D.I.」

04/Jul./2003

  

今回観ましたのは梅田のOS劇場C・A・Pでこの日公開初日の「D.I.」。2002年のパレスチナ・フランス合作の作品。パレスチナの中東紛争を題材に、笑えないような事情を痛快に風刺したユーモラスな作品とのことらしい。
ところがこの映画、実際観賞してみると、今までで最も理解に苦しむ作品だった。何がどうなんだ? さっぱりわからない。そしていつも以上に(いつものように?)ぐっすり熟睡してしまったのだ...。

最初の方はまだなかなか面白かった。朝出会う街の人に車の中で独り言で皮肉云う男。いつも道路を破壊して車を通れなくするじじい。毎日隣の家にゴミを投げ捨てる男などなど。登場する人物がどれも日常の生活を実にシュールに描いているのがとても面白い。

しかし、だんだん雲行きが怪しくなってくる。途中から主人公らしき男(エリア・スレイマン、本作の制作・監督も務める)が登場してから物語は急速に難解になっていく。いや難解というより、物語らしい話の展開がほとんど無いのだ。主人公とその恋人の女性は、いつも検問所で待ち合わせするが、台詞はまったくない。二人が何をしているのか、何をしたいのかさっぱりわからない。そのあたりから映画を観ているのがだんだんツラくなってきたのだ。

周りを見ると中には途中退場する人も出てくる始末。僕ももう外に出ようかと思ったほどだが、とりあえず最後まで画面を観続けることにする。何のことはない、途中で思いっきり熟睡したしね。そして、夜が明けたような気持ちで、映画は終わってくれた。

あまりにもシュールすぎたのだろうか、どうしてこんな映画になったのだろう?
後になって調べて見たが、やはりイスラエルやパレスチナの複雑な政治背景が関係あるようだ。パレスチナにユダヤ人のイスラエルが建国されて、パレスチナはイスラエルに占領れたとかなんとか...。文章を読んだだけでは理解が難しい、中東には複雑な歴史と問題がある。この映画はそんな背景を笑い飛ばすような風刺で演出されているというが、それが映画ではそんな説明がなされてない。説明しようとも、それだけ複雑なパレスチナの紛争を描くにはとてもそんな時間は無いし、また違う映画になってしまうものだからか。だからこの作品は理解がとても難しい。
主人公は東エルサレムに住む青年で、恋人はパレスチナ側のラマラ在住だからお互いが逢えるのは検問所の駐車場だけであるとか、意味不明な戦闘シーンで女が持っていた楯の形はパレスチナの地形そのものだとか、紅い風船の顔はアラファト議長で、その風船が向ったのは岩のドームだとか嘆きの壁だとか...。ここであげていてはキリが無いほど、映画を観ているだけではわからないことがたくさんある。当然それらを知っていた方がこの映画は楽しめるだろう。
しかし本国パレスチナではもとより、フランスでも好評だったということだけど、やはり日本人にこの映画は難解だろうね。

これはさすがに観客の動員もあんまり見込めないようにも思う。
あまりお勧めはできる作品だとは思いませんが、どうしても観るおつもりなら覚悟を決めてのぞんでください。
多少は予備知識を予習しておいた方がいいかもしれませんね。

次回は「ボクらはいつも恋してる!/金枝玉葉2」をご報告します。