「北京ヴァイオリン」

23/Jun./2003

  

土曜、動物園前シネフェスタで観たのは、この日が初日を迎えた「北京ヴァイオリン」2002年中国、原題は「和[イ尓]在一起」、チェン・カイコー監督作品です。梅田ガーデンシネマでも上映されていますが、やっぱりこのシネフェスタだと人が少ないですね。

母親の形見のヴァイオリンを手に、幼いころから一心に弾き続けてきた少年と、その息子の成功を夢見て全身全霊を捧げる父親。
出始めは水郷の美しい街並みをバックに流れるシーン。パッと広がるその明るい世界観、一気に画面へ引き込まれますが、二人は早々に北京に旅立ってしまうのがちょっと残念だったかな。
親子は北京へはるばるやって来たんだけど、そこで待っていたのは厳しい音楽の世界。たとえどんなに実力があっても、後ろ盾がなければ成功できない世界なのだ。

それでも父親は一途なまでに田舎の純朴な性格で、息子の面倒を見てくれる先生を探し続ける。一方の息子は意外なまでにあっさりしている。近所に住む大人の女性に恋なのか憧れなのか、やたらとつきまとったり音楽に打ち込む以外のエピソードが多い。
それはそれでいいンだけど、大切なヴァイオリンを売ってしまうエピソードは今ひとつ書き込みが弱かったかな。女性のためだったのか、父親への反発だったのか、両方だけどもう一つピンと来ない。
それにお話として最後のオチは気に入らない部分もあったように思います。特に息子の出生のエピソードはなくてもよかったと思うのに。

なにはともあれ、それでも全編を奏でるクラシック音楽は素晴らしい。僕はクラシックは全く知らないけど、やはりストーリと並行して演奏される音楽には心が震わされます。少年の一心に弾くヴァイオリンの音色、特に最後の北京駅でのシーンには感動で涙が溢れ出ました。これだけ音楽に感動したのは「戦場のピアニスト」以来でしょうか。

主演の少年を演じるのはタン・ユン。役者ではなく実際に北京中央音楽学院(劇中にも登場する中国で最高の音楽学府)に在籍する学生。小さい頃から厳しい練習に耐えてきたこともあり、泣くシーンではなかなか涙が出ず苦労したそうです(ヴァイオリニストってホントに劇中にある以上に、罵詈雑言の厳しい指導らしいですね)。
父親役はリウ・ペイチー、「秋菊の物語」や「西洋鏡/映画の夜明け」でお目にかかかりました。本作では彼の本領発揮とばかりに全面に炸裂する演技は見物。
最初のヴァイオリンの先生はワン・チーウェン。歌手としても有名な役者らしい、味のある演技。
その他は後になって知りましたが、ユイ教授の役を演じているのはチェン・カイコー監督自身(どうりで今回の出演者の中で一番役に違和感があった...)。
さらにリリ役の女性チェン・ホンはチェン・カイコー夫人。カリーナ・ラウのようなお色気ムンムンで勝気な女性を演じています、でも最後はやっぱり男に捨てられるんだね。
そしてユイ教授の愛弟子役で、コンサートシーンでヴァイオリンを弾いていた人は本職のヴァイオリニスト、リー・チュアンユンという人。本作のヴァイオリンはすべて彼の演奏によるものとか。

映画らしい見応えのある作品だと思います。
是非一度は劇場でご覧になって頂きたいものです。

次回はタイ発のホラー映画「the EYE【アイ】」をご報告します。