「山の郵便配達」

22/Nov./2002

  

続けて上映されたのは「山の郵便配達」。
99年中国、原題は「那山 那人 那狗」、意味は“あの山、あの人、あの犬”ということです。中国金鶏賞(中国のアカデミー賞)で最優秀作品賞、最優秀主演男優賞を受賞した作品。日本でも2000年の12月から公開され、当時のミニシアター系映画ではもっともヒットしたと噂される秀作です。

80年代初頭、中国湖南省が舞台。現代でも交通手段のない険しい山岳地帯。この地方一帯の郵便は、ひとりの年老いた男が配達していた。山から谷へ、重いリュックを背負い、何日もかけて、何十年もの間...。彼はひたすらに歩き続け、人々の思いを乗せた手紙を配達し続けていた。

そしてこの日、長年の過酷な労働に脚を悪くした彼は、長年続けたこの仕事を息子へと引き継ぐ為に、息子と友に最後の配達に出かける。ずっと仕事に打ち込んできた父親。そんな父親に、自分は愛されていないのかと、一度も彼のことを“お父さん”と呼んだ事がなかった息子。
そんな二人が、初めて一緒に旅をする、山の郵便配達。緑深く、美しい大自然が、二人の目前に控えていた...。

劇的なお話では無く、割と淡々と描かれてはいるが感動の作品。

まず、息子がいい。20代で、妙に明るく、今時の(といってもお話の舞台は80年代ですが)若い奴。貧相な田舎の青年という訳でも無く、短にわがままで自分勝手かという訳でも無い。物事を合理的にも考える、なかなか好感な青年だ。
父親は、何十年と配達を続けてきたが、その姿は少し心配してしまう程細く、ひょろっとしている。自分がすべて正しいと信じる頑固な親父でも無い、あまり口うるさくは言わない。しかし仕事には信念そ持っていて、ときには息子を叱る。
そんな父親が、息子に背負われて河を渡るシーンなんかは、おもわず同情の涙を流してしまう。
それになんといっても大自然が美しい。特に山に住む民族の若い娘(チェン・ハオ、これまた美人)が登場するシーンなんかは印象的だ。

最後のシーン。配達から帰ってきた二人を母親が街の入り口の橋で待っているところは、回想シーンも挿入され感動の涙の嵐です(このシーンは割とあっさり流されていたので、僕的にはちょっと残念!)。

父と子の、親子の絆が描かれている話ですが、この映画を観ると僕も自分の父親を思い出してしまいました。そうだなぁ、昔はあんなに大きく見えた父親が、ふと見ると、凄く小さく、そして老けていた。父が変わったのだろうか、それとも僕が変わったのだろうか(そりゃ両方やけど)、しかし今はもう、僕は自分の道を歩んでいる。

そんな訳で、今回の中国映画特集では一番の作品(<中国映画特集2002>はまだ続くのですが、僕はこの後の作品は観逃してしまいました)。今年の映画だったなら、トップ争いに上げてもおかしくないいい映画でした。

次回は「スズメバチ」をご紹介します。