「あの娘と自転車に乗って」

思春期を乗り越えて「大人」になるのね


  

急に寒くなりましたが、風邪などひいていませんか?
街には「ジングルベル」が流れはじめて、もうすぐクリスマスですね。この日は、三田にある「羽束山(はつかやま)」に早朝ハイキングへ行って来ました。500メートルくらいの山なんですが、登山道がしっかり整備されており、小1時間で登ることが出来ます。山腹の眺めの良い場所から日の出も見れたし、さっきクルマで走ってきた場所が、霧に覆われているの見えたりと、とても気持ちのいい山です。ちょっと、野趣には富まないけどね。

さて、今回は「あの娘と自転車に乗って」です。前から気にはなっていたんですが12/3の毎日新聞の夕刊に映画評が載っていたので、思い切って観ることにしました。

青春の一歩手前の思春期って、いろいろ悩み多き時代なのよね。どんな時代でもどんな国ででも。(もっとも、遥か思春期を通り過ぎて、オッチャンになっても、オッチャンなりに悩みは多いんだけども・・・)

キルギスタンの片田舎に住む少年が、悩みや悲しみを乗り越えて、ちょっぴり大人に近づく姿を優しく描いた秀作(キルギスタンが地球のどこにあるか分からない人は地図帳を開いてご確認下さい)。
自然に囲まれて、ノビノビ育っているようだけど、ある日、自分がこの家にもらわれてきた子供だと知ってしまう。その晩、涙ながらに、祖母に尋ねるが答えてもらえない。
そんなもどかしさを胸に秘めたままの数日後、最愛の祖母が急逝。父の口から祖母の少年に宛てた遺言を聞かされる「おまえは『養子』なのだ。でも、恥じることはない、この家を背負って立てる一人前の男になるよう、敢えて厳しく育てたのだから」と。
それを聞いて泣きじゃくる少年。泣く理由は「養子」だからなのか、祖母を失った悲しみからなのか...。そして、少年は祖母の葬儀の最後に家人を代表して村人に立派なあいさつを行うのでした。

数日後、少年が憧れていた方法で、想いを寄せていた少女をデートに誘う(ここが、映画のタイトルになっているのね)。祖母の死や、自分の生い立ちの秘密を知り、それを乗り越えることで、少年も少し大人に近づいたのね。

劇的なシーンなど全くなく、ほんとに淡々と日々の流れが描かれ、感情移入しやすくて「そうそう、こんな時もあったなぁ」って想いにひたれます。ほとんどがセピア調のモノクロで撮られており、時折象徴的な色使いでカラーのシーンが織り込まれています。その鮮やかな色が印象に深く残ります。
また、バックには音楽がほとんど流れておらず、村での生活そのままに小鳥のさえずりや虫の声がとうとうと流れています。それが余計にこの映画を引き立てていつように思えて仕方ありません。

遠くキルギスタンからやってきたこの作品は、静かに心に残る佳作でした。梅田・ロフトの地下にあるテアトル梅田で(多分)12月17日までモーニング&レートショーで公開中。

おしまい。