「ワンダフルライフ」

私は一体どんな「想い出」を選ぶのだろう?


  

今回は「ワンダフルライフ」。98年の日本の作品ですな。会場は動物園前のシネフェスタ。30名前後の大入り。このシネフェスタ、なかなか見やすくて気に入っています。新しくて綺麗だし、駅からも近いしね。いつもガラガラだけど。

今まで生きてきて「想い出」を一つ選ぶとしたら、何を選びますか?子供の頃、父とゴロゴロ岳に登ったこと?高校生の時にはじめてデートしたこと?まっ、それは人それぞれですね。
じゃぁ、ボクだったらいったいどんなことを選ぶのだろう?果たして、たった一つの「想い出」を選ぶのにさえ値しない人生だったもかもしれません。それに、何も「想い出」を残すために生きてきた訳じゃないしね。

後世に名を残すなんて、それはちょっと無理だよね。そうじゃなくて、考え方を変えて、せめて誰か他の人の「想い出」に残してもらえるよう、精一杯生きて見ようよ。そんな気にさせてくれる作品です。

今まで知らなかったけど、死んでから天国に行く前の一週間を過ごす施設があるのね。月曜になると、ここへ前の週に生命を全うした人たちがやってきます。
人々はここで、施設のスタッフから面談を受けながら、一週間かけて生きてきたときの一番の「想い出」を決めます。そして、土曜日には、スタッフが制作した自分の「想い出」を再現したフィルムを見ながら、その「想い出」の時の気持ちそのままを胸に天国へ旅立つのです。

ある月曜に、この施設に集まったのは22名。面談のなかで各々が「想い出」を語ります。でも、「想い出」は本人が語るだけで、回想シーンの挿入とかはないのね。
「想い出」を選んで、話し出すと、どんどん表情がよくなっていくのがわかります。「あ〜、この人、いい人生送ってきたんだ」って。ボクも胸がわくわくしてくるような感じ。

中には、自分は平凡な人生を歩んできたので「想い出」なんて無い、と「想い出」を選ぶことが出来ない人もいます。スタッフはそんな人にアドバイスをしたり、その人の人生を収録したビデオテープを見てもらったりして(こんなのがあるんだ!)「想い出」を決め手もらいます。なにしろ、その人の「想い出フィルム」を作らないと、天国へ行けないのですから。

何か、一見、重くて、暗いテーマを扱っているようですが、そんなところはみじんも見せず、作品そのものは、ほのぼのとして、カラッと仕上がっており、観終わったあと、ほっとするというか、勇気づけられるというか、なかなかいい気分で劇場を後にできます。
この映画でデビューした、小田エリカちゃん、なかなか良いです。ファンになりました。

残念ながら、上映は10月8日で終了してしまいました。ごめんなさい。

次回は「バーシティ・ブルース」か「家族シネマ」の予定です。

おしまい。