「八月のクリスマス」

静かに心動かされるラブストーリー


  

もの悲しい映画を観た。

間もなく死を迎えようとしている自分の前に、素敵な年下の女性が現れる。はじめは妹程度にしか考えていなかったのに、いつしか淡い恋心を感じる。でも、もう命の炎は燃え尽きようとしている。そんなとき、ボクなら一体どんな態度で臨むのだろう。ジョォンのように静かに自分の最後に臨めるのだろうか?
そんなことを考えさせられる一本。
ボクにはムリだな。彼のように静かに最後を迎えることなんて出来ない。

彼に恋する乙女を演じるのはシム・ウナ。彼女は凄くいい。この映画は彼女のためにあると言っても過言ではないだろう。
ジョォンが入院してしまい、長く閉まったままになっている写真館のショーウィンドウに石を投げつけてしまうタムリの姿が目に焼き付いています。

ジョォンはタムリを尋ねて役所にまで行くのに、どうして喫茶店の窓からタムリの姿を見るだけで満足してしまうんだろう。出ていって、声を掛ければいいのに…。

この映画で激しい感情の揺れが見えるのは、タムリが石を投げるシーンとディスコの洗面所で彼女が泣くシーンぐらいで、あとはとても感情が抑制されていて、ほんとに心静かに、優しく二人を見守る恋愛映画になっています。

淡々と綴られるストーリーに映画だって解っているのに、作り話だと解っているのに、ぐいぐい引っ張られて、大きく心を揺り動かされるのはボクだけではないでしょう。今まで韓国の映画を観たことはなかっただけに「お隣の韓国にもこんなにいい映画があるんだ」っと素直に感激しました。

ジョォンの友人たち、彼の写真館に来る人たち、みんないい味出しています。エピソードの一つ一つが彼の人柄を浮かび上がらせる、巧妙な仕掛けになっています。

まだ観ていない人には是非スクリーンに足を運んでもらいたい作品です。

見終わってすぐよりも、しばらく時間をおいた方が心にじわじわとしみ入るようです。すごく控えめで抑制の効いたラブストーリーですね。ボクもあと10年若かったらこんな恋をしてみたい。と枯れた感想を述べさせてもらいます。公開は7/23(金)まで。主演の女優シム・ウナがとってもかわいい。

おしまい。

※web-site掲載にあたり、この回は大幅に訂正加筆しました。