接吻

残念だけど、理解不能



  

何とも古風なタイトル。そして、何とも独善的なお話しでもある。
不道徳とは言わないものの、救いようがなくどうしようもないストーリーが展開される。これって、都会に暮らす淋しい人間のため息なのでは決してない。異常で異様な世界が、極めて客観的に描かれている。すなわち、スクリーンに映し出される映像には、主人公たちの心情がほとんど描写されることはない。その画面をおよそ2時間にわたり観続けるのは、かなり厳しかった。

この映画を観終わって思い出したのは、数年前に拝見した「ゆれる」。この映画の中でも人が殺される。しかし、そこに至るまでの、人間関係や心のプロセス(?)がとても上手く描かれていて、まさに心の動悸が画面から聞こえてきた。しかるに、この「接吻」では冷ややかどころではない。現在の心象だけではなく、人物の造詣や背景が全く描かれていない。つまり、終始、理解不可能だったのだ。
それでは、このテーマを映画化する意味がないように思った。自分がわからないもの、そんなものの中を少し垣間見てみたい。そう思ってスクリーンに向かい合った人も少なくなかったのではないかな...。

キャストは豪華。小池栄子、豊川悦治、仲村トオル...。しかし、いずれにせよキャストのスケールを大きく上回る尋常ではない世界。
観て楽しいわではない。異常なら異常でも構わない。ただ、もう少し観る側に配慮をした観せ方、内容にしてくれないと...、つまらない。
また、ファンの方には申し訳ないけれど、小池栄子にはやや荷が重すぎたのではないだろうか...? 一途に思いつめるストイックな役どころに果敢に挑戦する意気込みが、やや空回りしているように見えました。

都心のオフィス街。友人もなくポツンと働いている遠藤京子(小池栄子)、毎日ただなんとなく働いている。そんな中、TVニュースで流れる映像に釘付けになった。そこには、住宅街で一家三人を惨殺し、挑発的な行動を取り“猟奇的”な事件を起こしていた坂口(豊川悦治)がTVカメラの前で逮捕され不敵な笑顔を浮かべている様子が映されていた。その瞬間は、京子は坂口に“一目惚れ”した瞬間だった...。

誰がご覧になっても楽しめるのかどうかは、疑問。
でも、何かを求めて(期待して)この映画をご覧になっても、な〜んにも教えてくれません(きっと)。

おしまい。