その名にちなんで

名前から広がる家族のドラマ



  

人は、いつの段階で自分の名前について意識するのだろう。
そして、どうして自分にはこの名前が付けられたのかその理由を知りたくなるのは何時なのだろう?

自分に付けられた名前についての大河ドラマが展開される。それが、退屈ではなく、凄く面白い。
つくづく、自分の名前が突拍子もない名前ではないのが、惜しいような、それでいて、実はちびっと悔しかったりする。う〜む、微妙だな。ただひとつ言えるのは、誰でもいつかは自分の名前は好きになって、いつしか愛着を持つようになるものなのだ...。

映画に出る俳優は、そのほとんどが“見た目が全て”みたいなところがある。だけど、この映画に主演している男二人は決して男前の二枚目でもなんでもない。どこにでもいそうな普通の人なのだ。この映画はこれがミソなのかなぁ...。ただし、主演の女性は幅広い年齢を演じ分けているのだけど、こちらはかなり美しくて魅力的な方ですね。

この一家がどんな歴史を刻むのかについての興味はさほどない。無茶苦茶劇的で、歴史に残るような偉業を成し遂げた家族であるわけでもない。ただ、何もなければ歴史のなかに埋もれてしまいそうな、インドから渡って来た夫婦がいかにして米国で根を下ろし、子供たちを育てていったのかがとてもわかりやすく描かれている点に興味を覚える。
タイトルは、この夫婦が息子にどうしてこの名前を授けたのかから取られているし、息子がその名前に愛着を持つまでが描かれている。一見、こんな風に見えるのだけど、実は、この映画はインドから米国へ移民していった女性の生涯を描いているんだろうな、きっと。
まず、娘だった彼女が旦那を選ぶ際のポイントになったのが、彼が履いて来た“Made in USA”のウイングチップであったことが微笑ましい。ここのシーンだけ取ってみても、この女性がいかに好奇心旺盛な女性であったのかがよく伝わってくる。
彼女は、よく出来た妻であり、母であったけれど、あまりの淋しさに涙してしまったり、親元へ送る手紙には楽しいことしか書かずに安心させたり、極めて人間臭い部分もしっかり描かれて、ボクは彼女に感情を移入しながらこの長尺のフィルムの世界に埋没していく...。

縮んだセーターのエピソードには思わずボクも涙ぐんでしまったし、フランスで暮らす知り合いの少女のエピソードは、後日談もあり笑ってしまう。
名前にまつわる“大河ドラマ”だと思っていたのだけど、実は家族そのもののドラマ。上手く伝えられないけれど間違いなく、心に染み入るいいお話しです。もちろん、公開は終了しているけど、チャンスがあれば是非!
それに、ロシアの文豪ゴーゴリィ。いまだに読んだことはないけど、一度読んでみたくなりますね。この頃は古典の復古ブームだしね。しかし、ボクの名前が(武者小路)実篤とかじゃなくて良かった...。

おしまい。