28週後...

走る。走る。走る。



  

欧米の映画を観ていて時々ふと思うのは、数字を捉える際の感覚の違い。ダース(これはアメリカだけかな?)とかア・カップル・オブ・ディズなんて耳にするとそう思う。日数のもそうで、ボクなら週で数えるのは特殊な場合を除くとまず1週で長くても2週が限度、でも、この映画のタイトルは「28週」。それがどれくらいの期間を指しているのかすぐには理解できない。計算してみてようやく、ほぼ半年だとわかる。

この作品、2003年に公開された「28日後...」という作品の続編。「28日後...」はなかなか衝撃的なお話しで、ボクは絶賛していて「後世まで語り継がれるかもしれない...」なんて書いているけど、そんなことはなかった。でも、実際にこうして続編が制作されているのだから、それなりには評価されていたのかな。
そして、この「28週後...」。たいしたプロモーションもなく、ひっそりこっそりと公開されている。
正直に言って、5年も前の前作のことをすっかり忘れている。「だいたいこんなお話しやったなぁ...」程度には覚えているけれど、細かいところは覚えてません! しまった、ビデオかDVDで予習しておけば良かったなぁ(もちろん、そんな余裕は無かったけどね)。

原因不明の突然変異の病原菌。これは血液感染はもちろん、経口感染もする強力な病気。感染すると、瞬時に人間性は崩壊してまるで野獣と化してしまう恐ろしい病気。海で囲まれた英国で発生し、ロンドンはもちろん全英に拡散し、英国は廃墟となってしまう。前作ではこの病原菌や感染者から逃げる主人公を追ったものだった...。
で、その騒動から28週後のロンドンが舞台になっている。人間性が崩壊し野獣となってしまった感染者は、社会性も無くしただひたすら「走る」。すなわち、社会も崩壊し28週も経過するとその99%は餓死してしまい英国は無人の荒野となってしまった。そこで米国が音頭を取って英国復興プログラムが実施されることになった。

しかし、思い出すだけで身震いしてしまうほど恐ろしい話し。
実は主人公の奥さんだけは、感染してもなお発病しないという特殊な抗体を持っていた(いわゆるキャリア)というところがミソ。この恐ろしい病原体と家族愛を縦軸に、ロンドンに帰還していた人々への病気の拡散とパニック、そしてロンドンに駐在していた米軍ヘリのパイロットの存在を横軸にして物語りが織り成されていくのだが...。

人間が成すことは、完璧に見えてもどこか抜けていて、オペレーションを担当する人間のほんの些細な意地や行き違いからヒューマンエラーが発生する(まるで、全く同様のことがどこかでも起こってしまいそうで不安だけど)...。人間の作ったシステムにも体制にも“完璧”なんてことは有り得ないのだと教えてくれている。
また、軍隊が持つ理不尽な命令体制と指揮官の理解度と能力の低さに、実はこれは現実に起こりうる事象ではないかと心配になってしまう。
もうひとつ惜しいのは、医療担当の女性の将校が、どうしてこの姉妹をここまで保護しようと努力するのかをしっかり説明していないこと。ほんの数秒で出来るのに惜しいな。

う〜む。「良かれ」と思って成すことも、広い視野で見てみれば決して良くない。エンディングの映像が示唆的で強烈。あれはきっとエッフェル塔。それをバックにこの病気に犯された人々が走っていた...。こりゃ、続編への布石か?
それと、話題の広げ方。もちろん娯楽作品でなおかつホラーものだから、この映画のような方法ももちろんOKなんだけど、もう少し国家というものにも触れて欲しかった。すなわち、このウイルスのお陰でイギリスという国は消滅の危機に瀕している。それに対する言及が一切無いのが気になることと、他の国々のウイルスに対する反応が全く描かれていないのはどうしてなんだろう。このあたりの軋轢を描くだけでも2時間弱のストーリーは一気に書き上げられそうなもんだけどな...。これも次回作への期待でしょうか?

渋谷の映画館は、ずいぶんお邪魔したけれど新宿はまだまだ。今回お邪魔した「新宿グランドオデヲン座」はクラシックな大ホール。ここにごま塩程度の入りなのは淋しいですね。ただ、こんなタイプのスクリーンも是非いつまでも残っていてもらいたいものです、ムリかな? 決して万人受けする内容ではないですが、様々な示唆に富んだ近未来映画としてご覧になると、かなりいいと思います。但し、是非にでもって感じではありませんが...。

おしまい。