モン族の少女 パオの物語

美しい風景の中にも“悩み”はあるんだなぁ



  

こないだ観たのが「雲南の少女 ルオマの初恋」で、今回は「モン族の少女 パオの物語」とは...。雲南省とベトナムの違いはあるとは云え、どうも芸がないネーミング。原題そのままの意味なんだろうけど、邦題を考える際にはもう少し考えてもらいたいな。

このお話しはルオマのように、伝統的な生活と近代化とを単純に対比するのではなく、伝統的な生活を営むパオが内面に抱える家庭的な問題を深掘りしながら、近代化への道筋を探っていこうという趣向。
ただ、難しく考えながら観る必要は全くありません。

最初は何がなんだかよくわからない。いきなりパオのお母さんが川の流れに身投げして、村人が総出でその流域を捜索するところからスタートする。
人類の永遠の命題は何なのか。それは子孫を残し、血筋を残し、財産や文化を伝承していくことなのか。
少なくともこの映画で描かれているモン族においてはこの命題こそに価値観の全てが置かれている(ようだ)。でも、様々な考え方があることを知ってしまった現代においては、その唯一の価値観に対してさらりと疑問を投げかけ、そして悩むのだ。
悩むのは少女であるパオだけではなく、実はもうすっかり分別がついているパオのお母さんだって同じ。

美しいく素朴な田舎での暮らしの原風景、淡い恋心といった変質しない美しいものと、愛情の対象としての家族や自分の心に対する正直さやといった少しドロっとしたものとが対照的に描かれていく。
生きていくとはどういうことなのか、自分の幸せの拠り所をどこに置くべきなのか、決して正解はないのだけど、必要なのは必ずしも正解ではなく、悩み考えることが大切なのだと教えてくれます。
決してやり直すことが出来ない人生。やっぱりしっかり真剣に考えることが必要なのだな。

観ていて爽やかな気分になれるのかは疑問。
だけど、一見何もなくて幸せそうな生活の中にも、いろいろな見えないけれど深い悩みがあるのだなと教えてくれます。

おしまい