幸せの絆

素直に観ると、涙ぼろぼろ...



  

いいお話しだし、涙ボロボロの催涙ムービーであることも否定しない。でも、ボクの心の中にある素直じゃない部分が、この作品の“仕掛け”が気になって仕方が無い。
そして「變臉/この櫂に手をそえて」を思い出して仕方なかった。

中国の寒村。ある朝、大八車に乗せられた行き倒れの子供が到着する(しかし“行き倒れ”も“大八車”も、もはや“死語”やなぁ...)。村人たちは、その大八車を取り囲むものの、誰も手を差し伸べて助けようとしない。いや、出来ない。どの村人たちも今日を生きるだけで精一杯で、この子を引き取って食い扶持を増やすことは生死に関わる問題だから...。
しかし、この子を抱き上げて家に連れ帰った初老の男がいた。その姿を見送る村長の胸の中に去来する思いは...。

しかしなぁ。このおじいさんの息子の嫁さんが凄い! まぁ、よくもここまでいじめられるもんだ。ボクは何故か思わず、花登筺(はなと・こばこ)のTVドラマ「細腕繁盛記」(新珠三千代と冨士真奈美が主演・覚えてる人いるかな?)を思い出していました。
おじいさんや息子はもちろんだけど、近所の人や村の人たちはどうしてこの嫁さんの行状を諌めないないのだろう? とうとう、嫁さんの実家のお母さんまで出てきて...。
ボクが理解できなかっただけなのかもしれないけど、このおじいさんの家庭での力関係やどうしてそう(嫁さんにアタマが上がらない)なったかのを示すエピソードの挿入が欲しかった。そうしないと、この嫁さん、若いのに単なる性悪おばさんだょ(まぁ、実際にそうなんだけど...)。

「細腕繁盛記」とか「おしん」とか、なんだかそんなノリ。いじめられながらさまざまな苦難を乗り越えて...。そこに「變臉」のようにおじいさんと少女という組合せだから、かわいそうな目に遭うたびに目尻がうるうるしてくる。
そしてクライマックスには思いもしなかった事実が明かされて...。

「モンゴリアン・ピンポン」の大草原とは打って変わって、こちらは山また山のひなびた寒村。中国ってほんとうに広いし、そこの大地にへばりつくように生活している人々って大変なんだなぁ。今でもこんな生活なのかどうかはわからないけれど、これでは農民がこぞって大都会に流入するのも頷けるような気がします。

ボクが拝見したのは、銀座のシネパトスの初日初回(もう、遥か彼方の昔のことです)。三つあるスクリーンでも最も大きなスクリーンで上映(ここでこのスクリーンで拝見するのは初めてです)。スターが出ているわけでもなく地味な作品なので、入りはどうかなっと心配していたけど、そこそこ入ってました。お年を召したお客さんが多かったですね。入口では“涙のハンカチ”を配ってました(ありがたく頂戴しました)。
関西では天六のホクテンザで上映。もちろん、とうの昔にホクテンザでの上映は終了しています。
ボクのように性根が曲がっていない素直な方や、大陸が好きな方はご覧になってもいいかもしれません。お子様も一緒にご覧になっても大丈夫(しかし、ビデオやDVDになるのかな?)。

蛇足だけど、大学まで出て、故郷に帰って先生になるのは、どうも説得力がないような...。

おしまい