アイスケーキ/Ice Bar

あの保冷箱は如何にも重たそう



  

天才子役のパクチビンが主役を務めるハートフルな物語り。
まさにそのまんま。パクチビン無しには考えられないようなお話し。真ん中に彼がいて、そしてその他の物語りの肉付けがされている。
ほぼ同じ時期に観た「私たちの幸せな時間」のユンスの救いようがない少年時代と比べると、なんとも明るくて愛らしい生活なんだろう!

1969年、どこかの港町が舞台。ヨンネ(パクチビン)は母親と二人暮らし。学校での成績はさっぱりみたいだけど、得意技の頭付きを武器に腕白盛りの少年。夏休みを迎えたある日、ひょんなことで、いないと思っていた父親がソウルで暮らしていることを知り、父親を探しにソウルへ行くことを決意する。
が、ソウルへ行くにもタダでは行けない。子供料金とは云え安くはない汽車の切符代を稼ぐために、母親には内緒でアイスケーキ(アイスキャンディ)を街角で売るアルバイトを始めることにした...。

メインのストーリー以外にも、キャンディ売りの子供たちの縄張り争いや肝試し、金を稼ぐための密売に悩むコミュニストを親に持つ青年、親友の事故など、サイドを飾るストーリーも盛りだくさん。
しかし、やや詰め込みすぎた感もあって、やや消化不良かな。
まず、メインのストーリーで、父親と母親との間に一体何があったのかが明示されていないのはツライ。そのせいで、エンディングが全く感動のないものになってしまった。二人は何かの理由があり別れたはずなのに、その理由が明らかにされないまま、ただ再開することだけを無邪気に喜んでいいのか?

観終わって、感動は薄い。あゝ良かったね、という程度で終わってしまうのは、それだけ天才子役の存在にこの映画が乗っかってしまった結果だけに、納得というか、もったいない。

それにしても、子役たちが実によいのは事実。
パクチビンはもちろんだけど、親友のソンスを演じるチャンジュニョン、悪役子役(!)のヤンジュホ少年はその面構えだけで、ひょっとしたら一生喰っていけるかもしれないね。
また、最後の方でキャンディを買ってくれるアベックの若い女の子。どこかでお会いしたことがあるような気がするんだけど、どうも思い出せないのは、ごっつい悔しいょ。

ひょっとしたら日本での劇場公開はあるかもしれないけど、ないかな。まぁ無理をしてまで観る価値があるかどうかは...。こういう映画祭向け(!)の作品のような気がします。

あんにょん。