世界はときどき美しい

振り返るときに思い出す(かもしれない)



  

どうしてこの作品がこの福岡アジア映画祭で上映されるのかは不明だけど、何でも観る主義だから、夢天神ホールへ。
全部で5話からなるオムニバス作品集。それぞれの導入で入るアニメーションがキレイ。

感覚としては、どういうコンセプトでこの作品集が作られたのかは理解できる(ような気がする)。でも、この作品集に必然性があったのかどうか、また、観客が観たいという欲求を満たすものなのかは、甚だ疑問。
抽象的なテーマで、どうにでも解釈が可能(であろう)なテーマだけに、なにかフワフワとした、感覚として手前味噌的な出来栄えになっているのは否定できない(ような気がする)。
一言で表現すると「ボクには合わなかった」というのが正直なところだ。

(恐らく)誰もが日々の暮らしを営むうえで、日々何かに追いまくられていたり、その日その日のしなけらばならない何かに急かされていて、それをこなしたりかわしたりすることに精一杯。そうして、何とかその日一日を終えて一息つくわけだ。
すなわち、短い視野でその日を過ごすことの連続で、立ち止まって考えたり、ふと長い視野で自分の事や自分の周囲のことを考え直したりは(あまり)しないものだ。
この映画集は、そういった普段はあまりしないであろう“振り返り”を描いているのだと思う。振り返る瞬間やきっかけは、人によって違うものだろうし、違って当然だ。いつもなら目に止まらないような雑草。その草が付ける名も知らぬ花の美しさにはっとする瞬間がそうかもしれないし、自動販売機で何故かいつも選んで買ってしまう缶コーヒーのボタンを押す時なのかもしれない。
そんなヒントをもらい、振り返るときの美しさを思い出すために、この映画は作られたのかもしれない(違うかもしれないけど)。

松田美由紀、柄本明、片山瞳(新人)、松田龍平そして市川実日子がそれぞれ主演しています。

全体的に緩くて、アンニュイな感覚で満ちている。
役者も芝居も悪くないのに、長くは記憶に残らない。
そうか、ボクもふと人生を振り返るように、ふと立ち止まった時に、この映画のことを思い出すのかもしれないな。

おしまい。