イノセントワールド−天下無賊−

ラストはちょっぴり、切ない。



  

いかにもお正月映画。難しいところはなく、気楽に多くの人が楽しめる娯楽作品。
ちょっとお行儀は良くないけど、殺人が起こるわけでもなく、心を痛めずにスイスイと観ることが出来る。

主人公はアンディラウ。彼についてはもう説明は必要ないでしょう。アンディラウの相方にレネリウ。また「ただいま」に出ていたリー・ビンビンが意味不明なセクシー姉ちゃんで顔を出せば、大陸の映画でよく拝見するグォヨウ、チャンハンユーも出ています。
ただ、どこがどうと云う訳ではないけれど、全体から醸し出される雰囲気が垢抜けなくて埃っぽい。大陸での出来事をリアルに表現しようとすればとても上手に撮るのに、そこになんとなくエレガント感というか高級感というか、庶民に夢を見させようという工夫を入れたときに、ボクの感覚からすれば、妙に悪趣味としか映らないのは何故なんでしょうね?

ポー(アンディラウ)とリー(レネリウ)の二人は組んでスリを働いたり、美人局をする小悪党。映画の導入部分はなんともニヤニヤさせる仕掛けで、いかにもこんなことはありそうな気がする。まんまと手に入れたクルマ(しかもBMW!)で二人は大平原へ繰り出す...。
今の仕事に嫌気が差したポーは、この商売から足を洗って堅気になりたいと言い出し、二人は仲違いしてしまう。そんなとき、素朴な青年に助けられたリー。出稼ぎを終え帰郷するこの青年シャーケンと汽車に乗ることになった。青年はこれまでの稼ぎの全てを結婚資金にすると言ってカバンに入れていた。
この6万元がどれほどの大金なのか、そしてこの青年が数年の労働の報酬として凄いのかどうかは実感としてピンと来ないのだけれど、とにかくこの現ナマを巡って、たまたま汽車に乗り合わせたスリ集団との争奪戦が始まった...。

そこにお金があるということを知ってしまうと、もう居ても立ってもいられないのは、やっぱりスリを生業にする人たちの性なんでしょうか。そして、人を疑うことを知らない純朴なお兄ちゃん。
舞台は中国の大平原をひたすら走る列車の中。手に汗握る部分も確かにあるけれど、一言で表現するなら珍道中。
お話しの筋を追うのよりも、その場その場で繰り広げられるお芝居をお楽しみくださいね。

調べてみると、本当にお正月映画だったらしくて2005年のお正月に公開され、初日からの3日間の興行成績を塗り替えたとか。ボクはこの列車がチベットと北京を結ぶという設定だと思っていたんだけど、それだとまだ開通していなかったからムリですね。
監督さんのフォンシャオガン(馮小剛)は、拝見してませんが「女帝 [エンペラー]」も演出されているようです。
アンディラウが出ていますが、全編普通話の台詞で構成される大陸映画です。香港の役者さんたちは、よりマーケットが大きい台湾や大陸向けに普通話でもお芝居が出来るんだからたいしたもんです、ほんまに。

何も構えて見る必要は全くなく、忙しい毎日のちょっとした息抜き程度にお楽しみいただければいいのではないでしょうか。そんな大陸のエンターティメント作品だと思います。

おしまい。