墨攻

中韓のスタァが画面を...



  

力が入っている大作。アンディ・ラウとアンソンギの顔合わせとは、何とも豪華だし、この二人って、そこにいるだけで画面がピシッと締まるからやっぱりさすがだなぁ。

ボクはこの映画を観ながら、この人はこの役者さんにして欲しかったなんてことをいろいろ置き換えて考えていた。
まず梁王には、この大陸の俳優ワン・チーウェンでも悪くはないけれど、実はアンソニー・ウォンこそ適役ではなかっただろうか。また、一度城外に逃れた農民にはヒラメちゃんことユヘジンがいいな(実際に顔は似ていたけど)。他にもいろいろあったけど、代表的なのはこの二人。他には、弓の将校・子団には台湾のウー・チーロン。彼も悪くないけど、やっぱりその面影はニコラス・ツェーでしょう。王の跡取の息子・梁適も韓国のチェシウォンだったけど、彼はイソンジェかと思った...。

酒見賢一の同名の小説をベースにして森秀樹が描いた劇画(マンガ)が原作だという。その劇画は読んでいないけれど、小説は映画を観てから読んだ。メインのエピソードは同じだけれど、映画は手堅く脚色されている。この小説とはある意味全く別のものとしてしっかり楽しめる。
ここ数年、武侠ものの作品と言えば「Hero」とか「セブンソード」や「PROMISE〜無極」なんかがあったけれど、それらと比較してもスケールも迫力も全く引けを取らない。しかし、大陸を舞台にした武侠もののスケールは筆舌に尽くしがたいほどで、口をあんぐりと開けて文字通り“唖然”とするしかないね。こうなったら「蒼き狼〜地果て海尽きるとも」も観なくっちゃ。
で、この「墨攻」、映画そのものの出来ははっきりそれらの武侠ものを上回っている。それは、過剰なほどの様式美を演出していなかったことと、ロマンスのパートをかなり抑制して描いているからでしょうか。
少し残念なのは、墨家がどのような考え方(思想)を持っていたのかが上手く伝わってこなかったことでしょうか。でも、そんなのなくてもアアンディ・ラウがかっこ良ければそれでイイか。

133分、一気に見せてくれ、中だるみもなかったし、途中で時計を覗き込むこともなかった。これは凄いことだと思う。それほどこのストーリーが畳み込むように流れていて、観るこちら側を全く飽きさせなかったんでしょう。
梁適のラストと逸悦(ファン・ビンビン)の最期は小説の原作には無かったけれど、とても良かった。

墨家の思想の是非はともかく、観応えのある作品です。是非映画館の大きなスクリーンでお楽しみください。もっとも、ほとんどの映画館では上映は終わってしまっているけどね。

おしまい。