ダンサーの純情/Innocent Steps

アズバイ!



  

DVDは所有していても、ただの銀盤にしか過ぎない。外箱にプリントされている装丁を眺めていても、画像は再生されないものね。国内でも公開されると決まり、その日が近づいてきたのであわててパソコンにセットした(早くリージョンフリーのDVDプレーヤーを買わなくっちゃ!)。
韓国での公開前から楽しみにしていて、いち早く入手したのに、今ごろになってあわてて見るなんて、もったいないというかアカンね。

ストーリーはざっとこんな感じ。
将来を嘱望されていた若きダンサー、ヨンセ(パクコニョン)。彼はライバルの妨害に遭い、夢を断たれると共に、パートナーも彼の許を去ってしまう。失意のうちに過ごす彼を見かねた先輩が、中国の東北部延辺(エンペン)から彼の地でナンバーワンだという女性チャンチェリン(ムングニョン)を彼の新しいパートナーとして呼び寄せたのだが...。果たしてヨンセは再起できるのか?

パクコニョンは、地味に公開された「DMZ 非武装地帯 追憶の三十八度線」という作品で個性的な兵長を演じていて、印象に残っている。決して美男子ではないけれど、いい面構えの俳優さんだと思います。今後に期待できそう。
一方、チェンリンを演じるのは「国民の妹」と称されているご存知、ムングニョン。少女役から娘役の過渡期に差し掛かっていて、この作品ではまだまだ少女の面影が色濃い。上手く脱皮できるかな? 彼女はこの春から晴れて大学生になっていますね。次回作が楽しみなような、怖いような...。

ムングニョンのための映画ではないかと危惧していたのだけど、それだけではなかった。
しっかりとしたストーリーで、いかにもと思わせる小道具も上手く使ったメロドラマ(?)に仕上がっているではないか? 残念ながら語学力の関係で全てを理解できなかった(しかもラストあたりではこんがらがって、当惑してしまった)けれど、泣かせる力作だと素直に評価したい。
男がいて、夢が破れる。その後、再起へ向けて明かりが灯りかかるが、暗雲が垂れ込める。結局、夢は叶わない、でも男は希望を持って歩き始める。
そんな骨子に、ムングニョンが絡み、他にもいろんな肉付けがなされる。お話しに筋が通っていて、ハッピーエンドではないが、希望が持てて観ていて好感が持てること。そして、主役にドカンとムングニョンを持って来なかったところ。最後に善い役と悪役がちゃんと色分けされていたところがいい。ヒネリが足りないと思われたかもしれないけれど、わかりやすいのが一番だ。ありがちなシモネタ風の安っぽいギャグがなかったのもいい。
もちろん、実際にダンスをされている方にとっては、ダンスシーンの演技などにはかなりのご不満もあったとは思うけれど、素人のボクにはそんなに違和感はなかった。ただ、素人のムングニョンがわずか三月のレッスンで全国大会のファイナリストに残るという設定はちょっと無理があったかな、とは思うけどね。

チェンリンがヨンセに話しかけるときに口にする「アズバイ」ってどんな意味なのかちょっと調べてみたら、「アジョシ(=おじさん)」の延辺あたりで話されている朝鮮語の方言だそうです。上手く表記できないけど「アジュバイ」って感じだそうです。そうなんか〜って感じで納得です。でも「ヨボ」は「ヨボ」でしたね。

とにかく、あまり安易な方向へ走らずに、真面目に映画を作りました。真剣に演技しましたという気持ちが画面から伝わってくる作品だと思いました。
字幕なしでもその思いはしっかり伝わってきたのですが、なんだか、字幕付きで拝見したいような気がしてきました。もう一度行くから大きいスクリーンで待っててね!

アンニョン!