第8回・輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞

さて、今年の大賞は!



  

2006年中にスクリーンで拝見した映画は131本。それ以外にDVD・VCDやビデオ、それにインターネット試写会で6本観ました。その中でダブっているのが2本あるので、のべで137本、正味で135作品を鑑賞しました。
この本数が多いのか少ないのかはわからないけど、少なくはないかな。ボクとしては観逃したものも多いので、少し悔いが残りますね。特に1〜3月はほとんど映画館へ行けず、ひょっとしたらこのまま映画を観ないのではないかと、微かな危機感すら抱きましたが、春以降どうにか巻き返しました。
06年の特徴は、あんまり梅田で映画を観なかったことかもしれません、その分、神戸が多くなったかな。それと昨年に引き続き映画祭などのイベントで拝見する機会が多かったですね。

タイトルを見返してみると、実にいろんな作品を拝見させていただいたのですが、深く心に刻み込まれたものもあれば、どうしてこの映画を選んだのか理解に苦しむ作品もあります。
全体的な印象で云えば、例年に比べて小粒な感じがしたのですが、どうでしょう?

それでは、例によって全く権威はありませんが、ボクが独断で選んだ「第8回・輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞」をぼちぼちと発表していきたいと思います(もう8回目になったんだなぁ...しみじみ...)。


◆欧州賞…「明日へのチケット」
例によって、今年も欧州の作品はいいものが多かったように思います。「家の鍵」「歓びを歌にのせて」「戦場のアリア」も深く印象に残っています。その中でも欧州賞には、最近拝見したこともあるでしょうが「明日へのチケット」を選びました。派手さはないのですが、列車をテーマにしてとても上手く創られていました。3話のうち、1話目と2話目が良かったです。
欧州は列強主義からEUの発足を経て、今は国境という垣根を越えていろんな意味で民族の融合(民族の移動?)の時代に突入している。これからも様々なテーマで作品が撮られていくことでしょう。日本ではそのなかでごく一部しか上映されないのですが、本当に粒ぞろいだと思います。

◆米国賞…「スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと」
ご存知のように、ボクはハリウッドの大作はあまり目にしないのです。でも、小規模にしか公開されない米国の作品だって素晴らしいものはたくさんありました。「クラッシュ」「ブロークバック・マウンテン」は大規模公開作でしたが、考えさせられるお話しでしたね。
そんな中でも最も印象に残っているのが「スパングリッシュ 太陽の国から来たママのこと」。主演のパス・ヴェガが素晴らしかった。娯楽作としても充分楽しめたと思いますが、思いっきり考えさせられました。民族とは何か、プライドとは何なのかを。是非多くの方にご覧頂きたい佳作だと思います。

◆チャイニーズ賞…「ココシリ」
06年は韓流ブームにもやや翳りがみえてきたのか、中華圏の作品も多く拝見できました。大陸11本、台湾9本、香港13本で、合計すると33本。07年以降もこの傾向が続くといいなぁ。「忘れえぬ想い」「五月の恋」(リウイーフェイちゃんかわいかったなぁ!)「愛された記憶」など、いい作品も多かったし、満足度も高いです。でも、骨太の作品は少なかったような気がします。
選んだのが「ココシリ」。お話しとしてはどうかと思う部分が無いわけではないかったのですが、とてつもないスケールの大きさに、改めて中国のごっつさを感じました。とにかく、中国でなければ撮れない作品だと思いました。こういう作品がメジャー公開(三番街シネマ)されたことも嬉しかったですね(あんまり入ってなかったけど)。

◆韓国賞…「僕らのバレエ教室/バレエ教習所」
韓国の作品は44本(DVDなどスクリーン以外も含む)。05年の74本には遠く及びませんが、よ〜く観ました。本数は減りましたが心に残る作品は06年の方が多かったような気がします。「うつせみ」「弓」のキムギドク監督の作品は良かったですね。「ダンサーの純情」はDVDでもスクリーンでも観ましたが、ムングニョンはかわいいしパクコニョンが良かったな。「Sad Movie <サッド・ムービー>」「僕の、世界の中心は、君だ。」もいい。「ウェディング・キャンペーン」のチョンジェヒョン、スエの二人も長く記憶に残りそうです。また「まぶしい一日」も印象に残る作品でした(特に「宝島」のエピソード)。
そんな中でボクが選んだのが「僕らのバレエ教室/バレエ教習所」です。全くノーマークで、何も期待せずに観た作品でしたが、高校生たちが大人への階段をもがき苦しみながら上がっていく様子をクールに描いていましたね。不安定な心の動きが上手に表現されていて、それでいて押し付けがましくない展開に、無理強いをしなかった結論が良かった。お話しにややつたなさや物足りなさを感じる方もいらっしゃると思いますが、許容範囲でしょう。まだ若いユンゲサ、イジュンギ、オンジュワン、キムミンジョンの4人はいいです(もっともイジュンギはもうすでに大スターになっちゃったけどね)。

◆日本賞…「雪に願うこと」
本数ではなく印象として06年の邦画はなかなか粒揃いだったと思う。「明日への記憶」「間宮兄弟」などを観逃しているのもかかわらずそう思うのだから...。
「嫌われ松子の一生」「フラガール」「ゆれる」「やわらかい生活」などなど、挙げだしたらそれこそキリがないくらい。「好きだ、」「初恋」の宮崎あおいちゃんは良かった。この子と蒼井優の二人はこれからの日本の映画界を背負って立つ女優さんになってくれるのではないかな。「チェケラッチョ!」 「青いうた のど自慢 青春編」ではまだ青い日本の青春が、沖縄〜東京〜青森で表現されていました。
「雪に願うこと」は、伊勢谷裕介、佐藤浩市そして小泉今日子の三人が抜群! いろいろ迷うことが多い賞の選定だけど、06年に拝見した作品の中でも群を抜いて良かった。一番泣いたのは「フラガール」だったけれど、最も上手いのは「雪に願うこと」に間違いない。もし、女性ジョッキーが吹石恵ではなく、もう少し芸達者な方であれば、歴史に名が刻めた作品であったかも...。
もうひとつこの映画の凄いところは、猛烈な食欲増進作用があるところ。もう、ご飯が食べたくて食べたくて仕方なくなる!
ばんえい競馬は存亡の危機に瀕している。なんとか07年の存続は決まったようだから、この夏には帯広へ行ってみようかな。

◆男優賞…ファンジョンミン
今まで強烈な印象を残す人ではなかったし、時としてはキムサンギョンやカンソンジンと勘違いしてしまうほどの存在だった(ボクにとっては)。しかし「君は僕の運命/ユア・マイ・サンシャイン」のソッチュンは良かった。びっくりしてしまうほどに! そのバカのような一途さは並みの役者では表現できないピュアなものを感じた。もちろん題材や共演者(チョンドヨンやナムニ)の良さもあるだろう。でも、それを差し引いたとしても、ファンジョンミンはいい。
チャンスがあれば彼の真摯な眼差しを一人でも多くの方にご覧いただきたいですね。

◆女優賞…アンニ・クリスティーナ・ユーソ
06年。綺麗だったり、美しかったり、かわいかった女優さんは少なくなかった。でも、ボクの琴線をかき鳴らしてくれるような女優さんとの出会いはなかったような気がする。
そんな中でもインパクトがあったのが「ククーシュカ〜ラップランドの妖精」で主演していたアンニ・クリスティーナ・ユーソ(長い名前やなぁ)。何ともいえないストーリーなんだけど、その中で絶対的な存在感を持っているのが彼女。言葉はコミュニケーションに欠かせないツールなんだけど、絶対に不可欠なものではないということを凄く上手に表現していました(しかも、野性味たっぷりに!)。そのことに敬意を表して女優賞を贈りたいと思います。

◆行ってみたい都市大賞…ヘルシンキ
「かもめ食堂」って、ボクにとってはよくわからないお話しだった。どうしてヒットしたのかもわからない。でも、どこか人を惹き付ける魅力があったのでしょうね。それは小林聡美や片桐はいりやもたいまさこなどの出演者なのかと思っていたけど、実はヘルシンキと言う知っているようでな〜んにも知らない都市が持つ魅力だったのかもしれない。いや、きっとそうだ。
多分、一生行くことはないだろうけど、一度この街をあるきながらおむすびを頬張ってみたいような気がします...。

◆大賞次点…「プラハ!」
何と表現したらいいのだろう。今思い返してみると、決して楽しいお話しでもなんでもなかったのに、いつまでも心に残る作品でした。高校生たちは洋の東西を問わず、底抜けにバカで明るい。でも、それだけではなく、親の庇護から放たれてこれから生きていかなければならない社会は苦しくて辛いもの。それだけではない、社会の体制が明るさを奪い取ってしまうこともある。そんな次代背景を生かしつつも、観ていて楽しい。特にミュージカルシーンは圧巻で、これはハリウッドの作品かと思ってしまいます。
もうスクリーンで観るチャンスはないかもしれませんが、DVDが発売されているようですので、興味をお持ちの方は是非!

それでは、お待たせしました!

◆第7回・輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞…「13歳の夏に僕は生まれた」
これは地味に公開されて、地味に終わってしまったような気もするけど、実は凄く真面目で考えさせられる(ある意味、観終わってからごっつい疲れる)作品でした。
一体どんなお話しなのかはここでは繰り返しませんが、いろんなことがとても丁寧に描かれていて、ヨーロッパで今何が起こっているのかが少しだけわかったような気がしました。とにかく、実際に観て感じていただくしかないような気がします。
主人公のサンドロ。彼がこの経験を経てどのように変わったのか“その後”が知りたいような気がします。本当は中学生や高校生ぐらいの方にご覧いただきたいですね。まだビデオやDVDにはなっていないようですが、そう遠くない時期に発売(レンタル)されると思いますので、是非どうぞ。もちろんオススメです。


さて、2007年もスタートして半月ばかりが過ぎました。
ボクが勝手に選んだ「偽ジェ大賞」はいかがだったでしょう?
奇をてらったつもりはないのですが、比較的マイナーな映画に終始してしまったような気もします(まぁ、実際マイナーな作品を多く観ているからしゃぁないか)。
一番迷ったのが女優賞。宮崎おあいちゃんにしようかとも思ったのですが、彼女はこれからもどんどん活躍するでしょうからね。
06年は春先までほとんど映画館に行けなかったのですが、07年はなかなか順調に推移しています。

今年も楽しく映画が観たいですね。これからもよろしくお願いいたします。

また、この「偽ジェ」だけではなく「杭州飯店」の全体において、誤り、不具合、ご意見などございましたら、BBSの「けんちゃな帳」またはトップページの「contact me」から直接メールをご送付いただく、あるいは別館の「杭州飯店 ヴィラ二号楼」にコメントを書き込んでいただいてもOKです。お気軽にお寄せ下されば、出来る限り対応させていただきます。

おしまい。

(※07/Jan./16 加筆(日本映画賞)・若干の修正しました)



◆◆ 輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞 一覧 ◆◆
大賞 男優賞 女優賞 行ってみたい都市大賞
第1回(99年) 八月のクリスマス アリ少年
「運動靴と赤い金魚」
クリスティーナ・リッチ
「バッファロー66」
テヘラン
「運動靴と赤い金魚」
第2回(00年) 初恋のきた道 ホック
「フォーエバー・フィーバー」
スー・チー
「玻璃(ガラス)の城」
粟国島
「ナビィの恋」
第3回(01年) 不思議惑星ギン・ザ・ザ 朱旭
「こころの湯」
レニー・ゼルウィガー
「ベティ・サイズモア」
フィレンツェ
「冷静と情熱の間」
第4回(02年) 悪い男/Bad Guy ゲンとジュン
「able/エイブル」
宮沢りえ
「たそがれ清兵衛」
キューバのバス停
「バスを待ちながら」
第5回(03年) 一票のラブレター ティモシー・スポール
「人生は、くもりときどき晴れ」
チョンジヒョン
「猟奇的な彼女」
キシュ島
「一票のラブレター」
第6回(04年) 父と暮らせば 柳楽優弥
「誰も知らない」
寺島しのぶ
「ヴァイヴレータ」
LAのゲイバー
「コニー&カーラ」
第7回(05年) ミリオンダラー・ベイビー シュクラン・ギュンギョル
「少女ヘジャル」
田中裕子
「火火/ひび」
ウォンカのチョコレート工場
「チャーリーとチョコレート工場」
第8回(06年) 13歳の夏に僕は生まれた ファンジョンミン
「君は僕の運命
ユア・マイ・サンシャイン」
アンニ・クリスティーナ・ユーソ
「ククーシュカ
ラップランドの妖精」
ヘルシンキ
「かもめ食堂」