Sad Movie <サッド・ムービー>

愛がある別れは悲しい。



  

何組かの恋人たちが織り成す悲しいけど、何故かほっとしてしまう。そして美しいお話し。
まぁ、うがった見方をすれば、作為的で、いかにも映画向きのお話しなんだけど、それはそれ。映画なんだから、素直にその世界に入り込んでうっとりすればいい。

主人公がいるわけではないけれど、ある意味チャテヒョンが演じる「別れ話屋」が狂言回し的な役柄。それにしても、別れ話を切り出す役を代行するとはなかなか鋭い着眼点(でも、いつかは、自分が自分に別れ話を切り出す役が回ってくるんだろうなと容易に予想はできてしまったけどね)。
彼については「猟奇的な彼女」のキョヌのイメージをいつまでも引きずっているわけではないけど、青年実業家とかプレイボーイ的な二枚目は全く似合ってなくて、どちらかと言うと今回のようなダメダメな役が似合ってる。ボクは「あぶない奴ら〜TWO GUYS〜」が好きだな。
今回も誠実な男なんだけど、ある意味お目出度い役柄で、自分自身の身の上に何も気付けないちびっと哀しい役を上手に演じています。「そうそう、男って終わってしまった恋にしがみつきたいものなのよね」なんてじわっと思ってしまいました。

人生は出会いの連続なんだけど、ある意味別れの連続でもあるわけだ。
別れは「別れましょう」と言って、ある日きっぱりと別れることもあるけど、それは圧倒的に少数派で、実はいつの間にか時間をかけて徐々に別れてしまうことがほとんど。こうして人は、いつの間にか数多くの別れを意識しないうちに経験している。
でも、それは一般的な話しで、そこに恋愛感情が絡んでくると“徐々に”なんてことはなくて、やっぱり明確な“別れ”があるんだな。好むと好まざるに関係なく。
そしてどんな形であれ“愛”がある“別れ”は悲しいものなんだ。やっぱり。

そんなこと知っていたのに、知らないふりしてた。
悲しいものを寄せ集めて一つのお話しを構成するなんてアイデアはなかなか出てこないのにこうして映画にしてしまうなんて、いい着眼点だと思った。

消防隊員とお天気のお姉さん(チョンウソンとイムスンジョン)。
フリーターのお兄ちゃんとスーパーのレジ係(チャテヒョンとソンテヨン)。
聴覚に傷害がある着ぐるみのダンサーと画家の卵(シンミナとイギウ)。
キャリアウーマンの母親と小学生の息子(ヨムジョンアとヨジング)。

この映画。観る前は恋愛モノだと思ってたし、主演はチャテヒョンとチョンウソンだと思っていた。でも、実は最も心に残るのはヨムジョンア。雨の中に鳴り響くホイッスルとは、こんなに悲しいものだったのか...。不覚にも熱いものがほろりと頬を...。
この人「H[エイチ]」では酷評したのを覚えているけど、どんどん変わる。「薔花紅蓮伝」(邦題「箪笥」、イムスンジョンも出ています)での嫌味な継母役も悪くなかったけど、今作ですっかり見直しました! これからも楽しみ! (まぁ、もっとも役もいいだけどね。)

例によってすっかり紹介が遅くなってしまい、ロードショー上映は終了しているようですが、いいお話しですので、丹念にリバイバルを探していただくか、それともDVDの発売を待たれてもいいので、チャンスがあれば是非! まずまずのオススメ!
但し、恋人とご覧になる場合は、慎重に時期を選ぶ必要があるかもしれません(?)。

この作品が大阪アジアン映画祭2006のメインで、チャテヒョンの舞台挨拶付がありました。リサイタルホールはほぼ満席で、なかなか盛況でした。チャテヒョンってこんなに人気があるんだな。

おしまい。