マッチポイント

人生のマッチポイントは意外なところに



  

正直に言ってくだらないお話しだと思っていた。ありがちなお話しだと。ウディ・アレンの作品だと知らなければ、きっと観ようとも思わなかったに違いない。
映画がはじまっても、そう思っていた。ウディ・アレンにしては歯切れが悪いとさえ思っていた。
それだけに、観終わって「一本取られた!」という思いは強かった。さすがウディ・アレン(とここは褒めておこう)。

冒頭、テニスコートのネットを横から写したカットが続く。
ボールはネットを挟んでコートの左右を行き来しながらラリーが続く。そうして、ある時、ボールはネットにひっかかり真上に。そのボールがネットのどちら側に落ちるのか。それはまさしく時の運。プレーヤーにも観客にもわからない。

ロンドンでも名門の家柄。その名家に入り込んでしまおうという魂胆が見え見えの男と女。
男はトーナメント・プロを諦めたテニス・プレーヤー、クリス(ジョナサン・リース・マイヤーズ)。女はロンドンに出てきて女優を目指すヤンキー娘、ノラ(スカーレット・ヨハンソン)。
クリスは妹のクロエへ、ノラは兄で跡継ぎのトムへそれぞれ取り入るのに成功し、玉の輿に乗ったかに見えたが...。
物語りは予想通りに、ノラに一目惚れしてしまったクリスが、お互いの身分(作戦?)を忘れて横恋慕してしまい、とうとう越えてはならない恋の一線を越えてしまう...。

しかし、この映画でかわいそうなのはエミリー・モーティマーかな。ボクがあまり得意ではないエミリー・ワトソンのような顔で、決してぶさいくではないけれど、どこか華がない、薄幸の女性を演じている(決して地ではないだろうけれど)。今回のクロエ役もまさしくそう。調べてみると「ディア・フランキー」のお母さん役か...。

お話しはどんどん暗転して行き、クリスは抜き差しならない状態に追い込まれ...。とうとう決断したクリスは...。
そして、老婆が嵌めていたリング。クリスは川に投げ捨てたつもりだったが、欄干に渡されている手摺に当り...。

人生って何なのか。そんな大袈裟に考えることではないけれど、ふとそんなことを考えてしまう。もちろん、誰だって思う通りにはならない。大いなる青写真を描いていたにしても、その場その場で最善と思える選択をしている。だけど、それは本当に最善だったのだろうか? 時の経過とともに結果が明らかになったり、疑問や猜疑心が湧いてくる...。そして、結局は偶然が大きく左右するのか...。まるで、ネットに当たったボールがどちらのサイドに落ちるのかどうか、誰にもわからないように...。

観る価値があったのかどうかは自信がないけど。ボクにはなかなか面白かったのは事実です。
ウィットに富むいつものウディ・アレンではないかもしれないけど、確かに彼の作品です。

おしまい