迷子

台湾映画の行く先は...



  

ユーロスペースが移転したのは知っていたし、かつてのユーロスペースだったスクリーンが「シアターN渋谷」になっているのも知っていた。今回、初めて新しいユーロスペースへお邪魔したわけだ。ロビーの雰囲気はそう変わっていない。ただ特筆すべきなのは入れ物がかなり大きくなったことと、格段に観易くなったこと。これは嬉しい! もう少し割引制度などを充実させて下されば云う事なし!(ボクはたいてい観る番組を決めているから109のぴあか他の映画館の窓口で前売りを買うようにしている(上映中の作品もほぼ買うことが出来ます)けど、時間がなければそれもムリですね〜。シネカノン系の映画館はシネカノン神戸の会員証が有効なので、ちびっと嬉しいけど...)

もう一本台湾の作品。
結局、「楽日」「迷子」の二本を観て思ったのは、これではお客さんは入らないということ。「夢遊ハワイ」と「深海 Blue Cha-Cha」にしてもそうだけど、一部のコアなファンは映画館へ行くかもしれないけど、大衆に向かって門戸を開けているかというと、大いに疑問だ。すなわち、こういう路線で、製作者が作りたい作品ばかりを撮っていると台湾の国内製作映画そのものが「楽日」を迎えてしまうかもしれないと思う。ひょっとしたら日本に紹介されていなかったり、ボクがキャッチできていないだけかもしれないけどね。
「ラブ・ゴーゴー」や「恋人たちの食卓」なんかは、多くの人が観て楽しいと思うけど、今回の四本はどうなんでしょう? 国内製作の映画が閉めだされ、ハリウッドの作品がスクリーンを独占してしまうのでは? 台湾の実情はすでにそうなっているのかもしれないけど。
まぁ、そんな前置きはさて置いて...。

ある意味、奇想天外なお話しが展開される。
公演の一角にある公衆トイレ。これから一体どんなお話しが展開されるのかちびっと不安になる...。
お腹の具合が悪いおばあさん、トイレに行くために一緒に来ていた孫から目を離してしまう。トイレから出てきたら彼の姿がどこにも見当たらない。孫が迷子になったのか、それともこのおばあさんが迷子になってしまったのか...。

このお話しの面白いところは、背景がほとんど語られないところだ。この祖母と孫がどんな関係で、どんな家庭で生活しているのか。祖母がどうして孫の面倒を見ているのか。そして、孫がどこへ行ってしまったのか...。そんなことは一切省かれてしまい、狂ったように、それでいてあつかましくもあるこの老女が、それこそ疾風のごとく孫を探し回る姿が、切なくときにユーモラスに淡々と感情を挟まずに映し出される。
老女の悲壮感とは裏腹に、観ているこちらは冷静で、時には突き放したくなる。彼女は切迫しているのだろうけれど、そうは見えない。

結局、残念なことにボクにはあまり伝わって来るものがなかった。それは作り手が悪いのか、それともボクの感受性が磨耗しているからなのかはわからないけど。
でも「楽日」を先に観ていたからか、きっとお孫さんはおじいちゃんに手を引かれて映画を観に行ってたのかな、と思う。 そして、きっとおばあちゃんに会えたのでしょう。

ちびっと難しい作品。お時間があればどうぞ!
そうそう、このおばあちゃん「深海 Blue Cha-Cha」にも出ている方です。演技は上手い!

おしまい