夢遊ハワイ

あれからアップルちゃんはどうなったのかな?



  

最初は、台湾の若者がハワイを舞台に繰り広げられる珍道中か、そんなお話しかと思っていた。でも、全く違った。
韓国もそうだけど、台湾にも徴兵制度がある。
ある海兵隊の部隊。ある程度古株になると訓練はそう厳しくもなく、下士官や将校からうるさく言われることもあまりない。こうなると、部隊暮らしもそう悪くないのかな。実際はそんなこともないのだろうけど、かなり牧歌的な毎日が繰り広げられる...。

同じ部隊のアーチョウとシャオグェ、仲良し二人組みの兵士。満期除隊を目前にしたある日、上官から、自動小銃を持ったまま部隊から脱走してしまった後輩を憲兵隊に発見される前に部隊に連れ戻すことを命令されるが...。しかも、この命令は業務ではなく休暇だという。
二人は後輩の故郷である花蓮(ファーレン)の近くにある海岸へ向かう。しかも、何故か幼馴染の女の子シンシンを伴って。しかし、後輩の家には既に憲兵隊が警戒しているのを知ると、近くの海岸で日が暮れるまで遊ぶ。

この二人には「しかし、もう少しは前後のこととか考えて行動しろよな」と言いたくなるけど、この無鉄砲な行動こそ若さの特権なのかなぁ。いやあ、きっとそうなんだろう!
若者の行動をものを知ったような顔をして批判することは簡単。でも、若さゆえ、若いがための純粋さ、無知や無分別から来る性急さを、さも物知り顔で意見するのは、実はただ単に忘れているからだけかもしれない。そう、誰にだって、程度の差こそあれ、思い悩んで苦しんだ若い時があったのだから。

そんなこんなで、若さだけが取り得の二人組みがこのほんの数日の“休暇”を経て、青春時代に一つのピリオドを打つ(この映画のキャッチコピー“少年少女以上、大人未満。”は、実に的を得た表現で、唸ってしまう)。
その姿が、決して手際良くなく描かれている。観ているボクは過ぎ去ってしまった青春を眩しそうに傍観するしかない。そして、せめてボクはあの日々の光と影を忘れずに生きていこうと思う。

そうか、青春の日々とは、夜空に舞い上がる花火の光のように、一瞬の輝きを残して消え去っていくものなんだなぁ。花火の光はすぐ消えるのに、その美しさは記憶の中に永遠に残るんだもんね。

主演は「僕の恋、彼の秘密」でも主演していたトニー・ヤン。この人、顔はウマ面だけど、お芝居は下手じゃないみたい。
難しく観るのもありだし、な〜んにも考えずに観るのもありだと思う。

脱走兵のクンフー、それに幼馴染のシンシン。純粋さゆえの歪みをどう受け止め、どうやって大人になっていくのかは、国に関係なく、どこでも大変なんだな。そんな思いをしみじみと感じてしまいます。

大阪ではナナゲイで上映されていたようですが、もう終了しているようです。京都ではみなみ会館、神戸では新開地のアートヴィレッジセンターで、今後上映が予定されているようですね。
今回拝見した台湾の作品の中では、もっとも興行的に成功しそうな作品だと思います。

おしまい