もし、あなたなら2〜五つの視線

味わい深い五つのお話し



  

「皆が理解してあげなくちゃ」「男だったらわかるだろ?」「リュックサックを背負った少年」「ありがたい人」「鍾路(チョンノ)、冬」の5本のショートフィルムを集めたオムニバス。
昨年、OSで観た人権オムニバス「もし、あなたなら〜6つの視線」の続編。前作同様、ただ人権問題に対する直球表現で問題提議している作品ばかりなのではなく、変化球も多い。

前作でも感じたことだけど、本題やストーリーからは少し離れた部分に興味が引かれる。
すなわち“韓国ではこうなんだ”という感覚。表現方法や受け取り方が違うし、デリカシーも違えば、自分や家族や友人以外との距離感の違いが面白い(面白ばかりではないけど)。
これらは、旅行しているだけ、映画を観ているだけでは決してわからない微妙な感覚。「国民性」という言葉ではなく、やっぱり「社会が違う」んだなと思う。近いけど別の国なんだな。

面白いと思ったのが2本目の「男だったらわかるだろ?」。
すでに出来上がった三十路男の三人組が店にやってくるところから始まる。この三人組の内部の微妙な立ち位置、三人組と他の客、アルバイト店員(オンジュワン)。これらが「そうそう」と思ったり「そうなんや」と思ったり「またか」と思ったり。微妙に描かれる。
ボクはソウルで、泥酔するまでハシゴしたり、朝まで飲み明かした経験はないけど、そんなに暴れたり、店のテーブルをひっくり返してしまう客が多いのかな? こんな客ばっかりだったら、飲み屋はやってられないね。
このお話しのテーマは、確かにわかる。

4本目の「ありがたい人」もなかなか興味深かった。題材に対する着眼点が秀逸。名前は知らないけれど、学生運動家のお兄ちゃんが良かったです。世の中、体制側も大変なんだなぁ...。
「リュックサックを背負った少年」も身につまされるお話しで、北朝鮮に絶望し脱出してきたのに、また韓国でも絶望するしかないとは、なんとも皮肉。あのコーラ、きっと象徴されたものなんだろうな。

「皆が理解してあげなくちゃ」「鍾路(チョンノ)、冬」の二本はドキュメンタリー。従って込められているメッセージはストレート。障がいと朝鮮族のエピソードを通じて、現代の韓国が内包している問題点を指摘している。もちろん、これらの問題点は、そのまま日本においても同じことを言えるだろう。

この映画を観ながら思っていたのは、自分が「人権を守りましょう」と何食わぬ顔で思っているとき、それはきっと人権を尊重していないのだと思う。そうではなく、本来は守られるべき立場に立ったときになってはじめて“日本ってひどい国だ”と思うのでしょう。

再映されるかどうかはわかりませんが、観た人の心に長く残る作品だと思います。

あんにょん。