韓半島/Hanbando

仮想敵国は...。



  

公開2週にして、もはや観客動員数が300万人を超えたという「韓半島」。さっそく拝見してきました。
字幕無しで拝見しているため、理解度にやや難アリですが、大筋は外していないと思います(ただ後日、日本語字幕付きを拝見して、評価がガラっと変わる可能性もあります)。

釜山から新義州まで半島を縦断する鉄道「京義線」。この鉄路は朝鮮戦争で破壊されたこともあり、現在も38度線を境に分断され直通運転はされていない。
今では南北融和政策を受け、線路そのもの連結も終わり、試運転寸前までこぎつけたものの、北朝鮮軍部からの待ったがかかり、列車運行の目処も立っていない。そんな前置きがこの映画をご覧になる前に必要でしょう。

(そして、ここからが映画のお話し)
難関を乗り越え、38度線にほど近い臨津江(都羅山だったかな?)駅で韓国の大統領と北朝鮮の国防委員会委員長が出席して、京義線の開通式典が開かれようとしていた。しかし、そこに横槍が入る。なんと日本政府が1907年に結んだ条約を盾に、京義線の開通を認めないと宣言しているというのだ...。

この条約が実在しているのかどうかは知らないけれど、この設定にはどうもなぁ。さらに、この条約が成立しているのかどうかを巡って玉璽(天子の印)の真贋が問われるのもなぁ...。
ボクが日本人だから、日本の横槍に対してナーバスになっているのではなく(少しはあるかもしれないけど)、このお話しの前提になっている過去と近未来の設定に説得力がなさ過ぎるのではないでしょうか?
外交努力が全くなされておらず、国際世論への呼びかけもない。戦争一歩手前という国家の一大事というこの事態に、一介の民間人である歴史学者に全てを託すのは...。

もう一つ気になったのが、このお話しが群像劇である点。
大統領(アンソンギ)、歴史学者(チョジェヒョン)、副大統領(首相?)(ムンソングン)、官僚(チャインピョ)など様々な思惑で語られる。その視線が多すぎて観る側は理解出来ない。
また、作り手は、この映画の視線の大元は「韓国のナショナリズム」にあると限定しているのじゃないかな。だから、韓国のナショナリズムを共有できないボクにとって非常に疲れてしまうものだった。

それでも、この時点で300万人もの動員をして、最終的には観客数が500万人に達するのは固いと思われるだけあって、それなりに面白くは出来ている。
よくわからないカンシニルの位置付けだけど、確かに存在感はある。脇役で何度か顔を拝見していたムンソングン(「嫉妬は我が力」で編集長をしてた)もなんともいやらしい演技がいい。アンソンギの側近達もいいです。

ただ、この映画を観ていると、過去の日本と韓国の関係、特に韓国の近代史観をよく知ることはできる。
更に最近の日韓間の冷え切った外交関係などを照らし合わせると、理由はさておき、ひょっとしたらこの映画の中で描かれているような事態が起こるかもしれないなぁ...。ちびっと心配。
それだけ韓国は内政外交ともに混迷しているし、日本も一部の政治家の独走だとは思うけど、事あるごとに軍備について言及しているしなぁ...。今は竹島(独島)を巡る海洋調査船レベルだけど...。
今まで韓国映画においてナショナリズムの高揚を狙った作品の仮想敵国は云うまでもなく「北」であったのが、いつの間にかそのターゲットが日本になっているのはどう理解したらいいのだろう? (となると、現在構想中と伝えられている村上龍原作の「半島を出よ」はどうなるのかな?)

お話しがお話しなので、果たして日本で劇場公開されるのかは微妙ですが、映画祭レベルでならば可能性は低くないと思います。
観ても楽しくはないけれど、なんだか時代の微妙な流れを感じさせる作品だと思いました。

おしまい。