ドント・ルック・バック/Don't Look Back

青春は澱が沈殿した時間



  

仁川空港に着いて、空港バスでホテルまで移動。その時間を計算して、これくらいの時間から上映開始の回であれば間に合うかなと予定を立てていた。でも、ソウルまでの道中が混んでいて、やっぱり計画は机上の空論に過ぎない。予定通り行かないのも旅の楽しみだとしておこう。
ソウルのW杯記念球技場はスタンドの一部がショッピングセンター(カルフール)とシネコン(CGV上岩)になっている。以前も一度お邪魔したけど、お目当ての映画は売切れで観ることが出来なかった。ここなら時間つぶしも出来るし、駄目もとで出掛けました。

三話からなるオムニバス。
比較的難しいお話し。深層心理を切り拓くようなストーリーが展開される。説明が少ないのも特徴だ。語学力に問題があるボクには、少々(いや、かなり?)手を焼いてしまう。

そんな中でも、特に目が引かれたのが、二話目。
電話会社に勤める若い男性が主人公。ある日、工事で出掛けた街角で見かけた女性に心を奪われる。そして彼が取った行動は...。
これってそのままストーカー。だけど、意外なことに陰湿なイメージではない。

三話ともに共通しているイメージは鬱屈した人生の陰。
たとえどんな生活を送っていても、息をしなければ生きていけないように、泣いたり笑ったり、楽しんだり悲しんだりしながら生きている、人間は。そして、思い通りに行かなくて、どこかで思い悩んでいるものだ。そんな人生のちょっとした側面を描いている。何でも思ったとおりに実現する人なんていないから「俺は違うぞ」と思いながらも、展開されるストーリーの主人公たちにどこか共感できる部分がある。
だからこそ原題の「わが青春に告ぐ」というタイトルが頷ける。青春とは鬱屈した時間の連続なのだ。その中でいかに自分に折り合いをつけながら生きていくのか、ある意味それが青春のテーマなんだな、きっと。輝ける青春の裏側には、鬱屈した膨大な時間が堆積しているんだ。

一話目も観念的。屋上のペントハウス。そしてドアのガラスを叩き割るシーンが強烈な印象を残す。三話目はやや散漫な印象も受けるけど、丹念にシーンが積重ねられている。
メインのストーリーそのものより、実はこれらのお話しは主人公が置かれている環境の見せ方が上手いと思った。それは、ボクには理解できない不動産売買(賃貸?)のシステム、労働争議や兵役...。

ちょっと地味なストーリーだけに日本での上映はどうかなと思っていたら、はやくも「アジアフォーカス・福岡映画祭2006」で上映されるようです。細部はほとんど理解できなかっただけに、是非字幕付きで拝見したいものです。福岡だけじゃなく、関西でも上映してくれないかな?
少し重たいけれど、まずまずのオススメ。福岡の方でお時間が合う方はどうぞ。9/17(日)19:00、9/22(金)16:00、9/24(日)19:00いずれも西鉄ホールで上映されるようです。

ボクが観た日は最終日、CGV上岩での最終上映。お客さんは10名ほど、ボクが思っていたよりも若い方ばかりだったのが印象に残りました。

あんにょん。