13歳の夏に僕は生まれた

新しい世界に出逢う



  

世の中の仕組みや、自分がどんな立場に置かれ、どんな境遇に立っているのか。そんなことに気が付くのは、好むと好まざるとに関わらず、自分の殻を破って異界との交流を経てだ(まぁ、いつまでたっても、どんなことがあっても気が付かない人も少なくないけどね)。 それが緩やかな交流である場合もあれば、いきなり別世界に放り込まれてしまう場合もある。

今まで知らなかった世界がある。それは憧れの場所なのか、それとも見なければ、知らなければ良かった。出来れば知らずに目をそむけたい別の世界なのか。

サンドロ。
13歳とは、なんとも微妙な年齢。純真であり、何もかも信じたいと思う。何もせず、見過ごすことが出来ない年頃なのか。

同じ人間で、同じように苦労をして生死の境をくぐりぬけて来たのに...。いや、それどころか、この兄妹がいなければボクの命は終わっていたのに...。
その後の境遇が余りにも違うことに苛立ちが隠せない。自分が出来ることには限界はあるけれど、何とかしたい、でも...。
街を歩けば見知らぬ人から声を掛けられる「ヨットから落ちた少年ね」と。彼らはボクが生還を果たしたことは知っている。でも、どうやって、誰に助けられてここに戻ってきたのかは知らない。いや、知ろうともしていない。

人間の成長とは、今まで知らなかった世界に出会い、そして新しい価値観を知ることなんだな。その新しい価値観を知ること、受け入れることは全く別物だし、新しく出会った価値観が正しいものなのかどうかもわからない。
だけど、新しい出会いがあったからこそ視野は広がり、人間としての巾も出る。この出会いからどんな風に成長できるかは、自分次第だよ、サンドロ。

裕福な家庭に育ったサンドロは、誤ってヨットから海中へ転落する。助けを呼ぼうにもどうしようもない。海中に呑込まれる寸前にサンドロを救ったのが、不法移民を満載した船から飛び込んだ青年ラドゥ。船に引き上げられ目を覚ましたサンドロは異様な雰囲気におののくが、そんなサンドロを手助けしてくれたのが、ラドゥと妹のアリーナ。何とか沿岸警備に保護された移民船。サンドロは自分の命を救ってくれたこの兄妹を助けたいと思うのだが...。

楽しいとか、気分が晴れるというお話しではないのですが、ご覧になる価値はある作品だと思います。「輝ける青春」(あまりの長さに観逃しちゃったなぁ...)のマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の作品。
ジダンの頭突きで脚光を浴びた(?)ヨーロッパでの移民問題。ある意味その核心を突いたストーリーかもしれません。ボクのようなおっさんではなく、出来れば13才、中学生高校生くらいの若い方にご覧いただきたいですね。
長くない公開日程、そしてレディースディも重なったせいか、水曜の昼下がり、シネ・リーブル梅田は立見まで出る盛況でした。梅田での上映は終わっていますが、関西では9月に入ってから京都での上映があるようですし、広島、岡山、福岡でもこれから公開されるようです。

チャオ!