風のダドゥ

あの丘で風に吹かれてみたい



  

独身の頃だからもうウンと前、よく九州へ遊びに行った。知り合いが湯布院に別荘を持っていて(!)、そこを根城に夏と冬に遊んだ。その当時、山歩きには興味がなかったのが惜しまれる。今なら、久住も歩きたいし、鶴見岳だって。足を伸ばして霧島の韓国岳も歩いてみたかったなぁ...。あの別荘、今はどうなっているのかな。
そんなわけで阿蘇にも何度も行った。ほとんど歩いてはいないけど。

阿蘇が舞台で、馬が出てくる映画が撮影されているという話しは聞いていた。そして、とうとう関西でも公開される。そんなに上映期間は長くいなさそうだから、観逃すわけには行かない。あわててシネ・リーブル梅田へ駆けつけた。

ただ、お話しそのものはちびっとユルくて、複数のエピソードが交錯するんだけど、その各々の掘り下げが浅くて、散漫な印象を受けた。各々のお話しにもう少し関連性があれば良かったのか、それともお互いが似たようなエピソード過ぎたのか...。もう少し焦点を絞った方が良かったかもしれないな。

馬と触れ合うことによって心が癒される。それはボクにも経験があるからわかる。
門戸にいたアズキちゃん。どれだけボクのささくれだった心を癒してくれたことか...。でも、日高で牧場で生活して、四六時中馬と一緒にいたとき、まだ若かったせいもあってか、癒されたとは感じなかったな。きっと、それは日常から離れた異常な経験だったからなのでしょう。

全てに疲れた女の子が学校を抜け出し、阿蘇へ来る。どうして阿蘇だったのか、そして阿蘇でもこの場所だったのか。制服のまま彼女は疲れ果ててうずくまったまま動けなくなる。行き倒れ。少女は阿蘇に死に場所を求めてやって来た。
そんな彼女がもう一度生き直してみよう、学校へ戻り、もう一度希望を追いかけようと決心するまでがメインのストーリー。
そこに、牧場のスポンサー探しのエピソード、この牧場に寄宿している登校拒否の男の子の話し、そして乗馬を指導している元教員の話しが絡む。

冒頭にも書いたけど、この三つの問題が心に傷を負っているという点で似ているところが苦しい。幾ら馬が10頭ほどいる牧場とはいえ、そう次から次へと傷を癒すことは出来ないだろうし、心の癒しを求める人だけが牧場に集まるのでもないでしょうに...。
全くタイプが違うエピソードが、この牧場で展開される方が良かったような気がします。

犬塚弘がいい味を出しています。元教員役の榎木孝明はどんな人か知らないけど、ちょっと演技が硬かったかな。一応(?)ヒロインの木村文乃はかわいくていいね。今度はもっと明るい役でお会いしたいです。
タイトルにもなっている“風のダドゥ”が聞ける丘、いつか歩いてみたいです。

おしまい。