ジャスミンの花開く

人生は長く、そしてやりなおせない



  

続けてもう一本大陸の作品。
最近、チャンツィイーってどうなのよ、と思っていたけど、すっかり大女優としての貫禄が付いてきましたね。身体は細いままだけど。

この映画、もちろん主役はチャンツィイーなんだろうけれど、観ればわかります。実は...。

恋愛には計算がないのか。それとも、純粋さの前には計算とか損得は意味をなさないのか...。
そりゃ「love is brind」だものね。だけど、母親や祖母は、訳もなく年齢を重ねてきただけではない。今は若さゆえに見えないけれど、年を経ているからこそ見える大切なものも少なくないのだ。

中国・上海。この街の中心街で写真館を営む家族の物語り。しかし、この家には代々男の家族はいない。
日中戦争前夜。上海は中国の玄関口として独自の繁栄をしていた。写真館の看板娘、今日もお出かけ前の化粧に余念がない。そんな娘の姿を母親は苦々しく見つめていた...。
娘は映画スタアを夢見て、その座の一端を掴みかけた。しかし、時代の波に飲み込まれてしまう。やがて娘は成長する、世の中はガラリと変わり、共産主義の大波が彼女を包み込む。悲劇が一家を襲う。娘だけを残して。その娘も成長し、女優になりそこねた祖母が見守る中、自由に憧れ、恋に憧れる...。その果てに待っていたものは...。

悲劇ではない。この時代にはもっと悲惨なお話しは幾らでもあったはず。テーマは、若さであり、恋であり、愛であり、そして決してやり返すことが出来ない人生のほろ苦さ。そして、どんな時代であっても人間はあまり変わらないんだな、ってことなんでしょうきっと。

さかりが付いたネコの鳴き声を耳にして、眉をひそめる。
でも、人間だって若い間はず〜とさかりが付きっぱなしなのかもしれない。若さとはそんな恋の季節で、そんな季節の積み重ねが、人間の歴史なのかもしれない。時が移り、時代が変わっても。

もう20年もしないうちに、中華人民共和国が成立しからの数十年の総括がなされると思う。すなわち、文化大革命が何だったのかが明らかにされる。政治の中枢にとっての文革、批判の対象として矢面に立たされた知識人たちにとっての文革、文革で下放された学生たち、そして息をひそめているしかなかった庶民にとっての文革。
今はまだ、断片的にしかボクの目や耳にはとどかない。それらが総合的に歴史としてどう判断されるのか楽しみでもある。 いや、そんなことはどうでもいいか。

ラスト、街にあった写真館は再開発(?)で取り壊される。そして、新しく建てられたアパートに引っ越していく親子に現代中国の何かを見たような気がしました。
この映画でも、現代中国史をざっとおさらいできますね。

男優陣もなかなか豪華。
ご覧になって損することはないと思いますが、ちょっと重いと思われるかもしれません。ボクはまずまずの出来だと思いました。

再見!