玲玲(リンリン)の電影日記

夢見ごこちの電影天地



  

よくわからないままに、現代の北京の街が映し出される。手に職もなく、ミネラルウォーター(蒸留水?)の巨大なボトルを自転車に載せ配達する仕事をしている夏雨の姿が登場する(あぁ「太陽の少年」の彼が懐かしい...)。
汗水たらして、ずっと仕事をし、週末にオールナイトで映画を観るのが唯一の楽しみだそうだ、それもアクション映画がお気に入りらしい。
そんな彼が災難に遭遇する。路地でいきなりレンガでアタマを殴りつけられたのだ...。

子供を上手く使うのは、ある意味あざとい。
それはわかってはいるのだけれど、ついつい引き込まれ、そして物語りの世界に没頭してしまう。それにしても、この子役たち、実に上手い。いい芝居しているんだなぁ。

地方にある炭鉱。街の広場に天幕を張り、毎夜映し出される映画。炭鉱に働く人たちにとって、この映画だけが唯一の娯楽であったの かもしれない(いや、きっとそうだんだろう)。
この天幕映画、ボクが想像するよりも当時の中国の人たちにとっては身近な存在だったんだろうな。
そんな野外映画を取り巻いていた人たちの心暖まるエピソードが、なんとも優しい視線で綴られている。

孤高で、強く逞しいでも美しい母。ヘンな転校生の坊主。そして、当時上映されていた銀幕のスタア。何故か凄くいい奴の弟。少年宮という言葉の懐かしさ。都会にある映画館。そして、一転。哀しい出来事。
時代を取り巻く空気も上手く描かれ、自己批判や豹変する近隣の住民、そしてテレビの普及、それに伴う映画の衰退...。中国の庶民の視点での生活史がざっと紹介されるようなものだ。

全てのピースがぴたりと合致したとき。奇跡は起こる。

懐かしくて、温かい気持ちに包まれることは確実。
なんか最近、素直になれなくて、いつも心のどっかが斜に構えていた。でも、この映画を観て、少なくとも観ている最中は、ボクの心がゆるやかにほぐされて、どんどん素直になっていく。映画館のシートにどっかりと腰をおろして「ひょっとしたらいいこともあるかもしれないな」なんてそんな気分になれた。
お話しの詳細は語りませんが、ほっと一息つきながら、いいお話しが観たいなってときに最適な作品だと思います。例によって、上映は終了していますが、ビデオやDVDでも十分お楽しみいただけるのではないでしょうか。はっきり云ってオススメ!

再見!