風の前奏曲

ようやく巡り会えた



  

ようやく巡り会えた「風の前奏曲」。いやぁまさに「待てば海路の日和あり」。今後もパルシネマさんには頑張っていい作品を上映していただきたい。
「博士の〜」の上映時には半分ほど埋まっていたのに、「風の〜」ではパラパラ状態になってしまったのは淋しかったですけどね。

物語りの構成が惜しい。それとも、敢えて盛り上がりを避けて、淡々とした流れを狙っていたのでしょうか?

今まで、見たことも聞いたこともないなかったタイの伝統楽器ラナート(木琴の一種)。
その第一人者であるソーン師の一生が、少年時代の思い上がりの時期から本物へと一皮剥けるまでのエピソードと、晩年の文化統制令に反して伝統芸能を守り抜こうという運動(姿勢?)のエピソードが交互に織り交ぜながら語られる。

このラナートが奏でる音色。怖ろしいほどに心地よい。う〜ん。知らなかった!

ひとつの盛り上がりが、青年ソーンが真のラナート奏者として目覚めるきっかけになったライバルとの競演会。どちらの演奏がどう凄いのかまではわからなかったけれど、クンインとソーンの弾き競べには迫力があった。
もう一つが、近代化を旗印に、軍部が文化統制に乗り出し「伝統芸能は、国家の近代化を妨げる」として、ラナートも含めて一切の伝統芸能の上演ならびに演奏を禁じてしまったこと。晩年に差し掛かって師としての地位を確立していたソーンは積極的に運動をしたのでも、姿勢を示したわけではなかったものの、命を懸けて最後の演奏を行うのだ。

パーツに分けて語る順序をちびっと入れ替えるだけで、落涙必至の盛り上がりになったどろうに...。恋のエピソードも含めて、敢えて大人しい構成としたとしか思えない。
惜しいのか、それとも国民性なのか。きっと両方なんでしょうね。

どうしても追いかけてまで観たいという作品であったのかどうかは、ちびっと疑問ですが、ご覧になっても決して損は無い作品だと思います。
ボクにとっては、この映画を通じてラナートという楽器に出会えたのは嬉しかった。久しぶりにサントラのCDが欲しくなりました(買ってないけど)。

おしまい。