ブロークン・フラワーズ

誰にでも、過去と向き合う時が来る



  

何とも不思議でコミカル。だけどどこか物哀しいお話しなのだ。
ビルマーレイはいつからこんなに哀しい役ばかりが回ってくるようになったのだろう?
予告編を見る限りなかなか面白そうな設定だと思ったんだけど...。結局、面白くともなんともない。ある意味「家の鍵」の対極にある。愛や家族を持つことを否定した男が、ふとしたきっかけで、自分の過去と正面から向き合い清算する必要に迫られる。
今までノンキに気楽に生きてきた、独りで。ピンクの封筒が舞い込んで来るまでは...。そして、おせっかいな隣人に背中を押されて、封筒に誘われるように旅に出るはめに...。

しかし、この旅が甘くない。辛く切ない(もう一つ云うと面白くない)。それは、ボクという人間がまだビルマーレイの境地に達していないということなのかな? きっと、そうだ。もしボクが彼と同じ立場だったら、リストを片手に過去を巡る旅に出られただろうか? きっと出ていないような気がする。そんなこと、怖くて出来ないよ、きっと。でも、これは映画だから、ドン(ビルマーレイ)は飛行機に乗る。

そうか!
この映画を面白いと感じられるのは「こんなお話しは、まだまだ先だ」と高をくくっている、ビルマーレイがドンファンだった頃のような年頃の若い人達であり、彼らに向けられた警告なのかもしれない。
そう思って観ると、確かにそういう味わいはあるか...。
人生は決して楽しいことばかりではない。楽しいことばかりしていたと思っている人たちも、ふと我に返って苦しむこともあるんだ。
なんとも苦々しく思ったのが、前夜空港の到着口で見かけ、街のダイナーの窓から見つけたまだ若いバックパッカーにあれやこれやと世話を焼いてしまう姿。

あゝ人生って、こんなものなのかな。「苦く切ない」って思っていたら、何とも締まらないオチに笑ってしまったけど、その後、笑うに笑えない。なんだか言葉には出来ない淋しさが漂いました。

とうとう観逃がしてしまったけどビルマーレイ主演の「ライフ・アクアティック」。観たかったなぁ。まだチャンスは巡ってくるかな?
比較的短期間で上映は終了してしまいました。若い人には面白いかな。ボクのようなおっちゃんには、少し淋しいお話しでした。
ツボに嵌った方にはごっつい面白いと思いますが、そうではない人にはちょっと...。味わい深いのは確かなんでしょうけどね。
アクションものでもないので、ビデオやDVDでご覧いただいてもそれなりのお楽しみいただけると思います。はい。

おしまい。