Vフォー・ヴェンデッタ

ボクも一枚欲しいです



  

全く観る予定はなかったのだけど、シネフェスタで拝見することにしました。
予告編は何度か拝見しています。おどろおどろしい雰囲気...。

この作品は、敢えて焦点を外しているのではないかと勘ぐりたくなる。それほど何が何だかわからない。
それでも、巧に時代背景が語られる。第三次世界大戦を経て、“地球の警察”として君臨していた米国が没落し、英国では独裁政権が誕生し恐怖政治を行っている。そんな、ちょっとニヤっとしてしまいそうな近未来が舞台になっている。これはこれで上手い。
この政府に対して反旗を振りかざす謎の男が現れる...。

が、この映画の主題は、起こるかもしれない近未来に対して警鐘を鳴らすことではない(ように見えた)。もし、そうだとしても、繰り返し語られる「火薬陰謀事件」がボクにはあまりにも馴染みが無い。あのフラッシュバックだけで、謎の男に同調するのは、少し(いや大いに)ムリがある。
この仮面の謎の男と、ナタリー・ポートマン扮するイヴィーが、偶然に出会い、お互いの謎を秘めたまま、淡々と一年間を俯瞰したお話し。

何故か。
それは誰に、そして何に軸足を置いてこのお話しを楽しめばいいのかがさっぱりわからないから。

確かの、手に汗握り、涙を流し、そしてあっと驚くどんでん返しもある。でも、思わず口に出るのは「それで、どうした」なのだ。
社会主義的な全体主義や個人への抑圧がイメージで「悪」と描かれていることが悪いとは言わない。でも、それはイメージにしか過ぎず、近未来において、強烈なリーダーシップのもとになびいていくのは悪くないのかもしれない。仮面の謎のおっさんが追い求めている現政府の転覆の方が、大衆にとっては迷惑かもしれない。
ここをもっと明確に描いてくれないと、観る側はイメージの中を泳ぐでもなく漂っているだけになる。

難しいことはいい。イメージ優先で、仮面のおっさんの味方としてこの映画の世界に入っていこう。だとしても、スンナリとは入れないよな、きっと。
イヴィーが捕らえられて、頭髪をバリカンで刈られるシーンはちびっとむごい。その後の獄中生活の陰惨さも目を背けたくなる。だけど、この一連のシーンは本当に必要だったのかな?

様々なナゾとクエスチョンを内包しながら、一気にクライマックスを迎える。
う〜む。
目的は現政権の転覆なのか? それだけじゃないでしょ。革命を起こし、それを成し遂げた後のヴィジョンが欠落していると、それは単なる暴力にしか過ぎないのではないでしょうか?
時折挿入される酒場や家庭内の様子。彼らのような一般市民もバカではないと示唆しているのだろうけれど、その大衆の欲求がいったいどこへ向いているのか、それを明示しないことには第三次大戦後の米国の二の舞になるのではないでしょうか?
仮面のおっさんは所詮ナルシストにしか過ぎず、展望がない破壊主義者として生涯を終えることに満足している。

映画を観ながらこんな難しいことを考えていたわけではないけれど、なんか場当たり的で納得できない感を抱いていたのも事実です。
この革命の後、イギリスがどんな国になったのか知りたいし、不安。

ボクはマトリックスを全く観ていないので(いや、弁天町でうどんをすすりながらお店のTVでちらっと見たことはあるな)、この作品がどうマトリックス的なのかはさっぱりわかりませんでした。
ナタリーポートマンは相変わらずお美しくて素敵。仮面のおっさんはしじゅう仮面をかぶっているので評価は難しい。ボクは苦渋するフィンチ警視ことスティーブンレイが間抜けだけど良かったです。

あの仮面、試写会では全員に配られていたらしいけど、ボクも一枚欲しいです。

おしまい。