寝ずの番

うしし



  

日本の俳優さんを観る時には、その俳優さんがかつてどんな芝居をしていたのか、そのときの印象に引っ張られてしまうことが多々ある。
それはそれで仕方ない。でも、料理方法を変えると「この人こんな芝居(役)も出来るんや!」と思ってしまう。そう言う意味では、ベテラン俳優を意外な役で起用するのは、監督やプロデューサーの腕の見せどころ。
長門裕之や岸辺一徳は予想の範囲内。この映画のサプライズは中井貴一が関西の噺家を演じるところだろう。
そんなことを思いながらこの映画を観ていると、つくづくボクは日本の役者さんを知らないのだと、妙に感心してしまう。長門裕之、岸辺一徳、笹野高史、中井貴一、富司純子そして堺正章はわかるけれど、あとの人は知らない。蛭子能収さんは知っているけど、この人は役者さんじゃないしなぁ。
そんなこんなで、「おそそ」ネタでは中井貴一の奥さんを演じていた女優さん(木村佳乃)をよく知らないのは、おかしさを半分しか理解していないのではないかな。なんとももったいないお話しです。

上品か下品かは、実に紙一重。
シモネタを連発すれば下品なのかと思えば、そうではない。
ある意味、大人が「うしし」と喜んでしまう。そんなお話しなのだ。
津川雅彦がマキノ雅彦名義で監督をした第一作。でも、妙に力が入っていない。上手く、実に上手く撮っている。決して上品ではないけれど、かと言って下品に過ぎず、「うしし」と楽しませてくれました。

ただ、惜しむらくは、ラストの夜明けの街並み。
これ、絶対に大阪の風景とちゃう、きっと東京やろな。それが惜しい。
途中、中井貴一のアパートでは「生玉」の町名表示が入っていて「なんや知らんけど、芸が細かいな」と思わせただけに...。

別にオピニオンやこ難しい主義主張など無くてもいい。「お客さんに笑って欲しい、楽しんで欲しい」そんな思いだけで十分にいい映画は撮れるんやなぁ。
普段は映画館でお見かけすることがそう多くない、中年以上の夫婦の方が多かったのも頷けます。そうそう、これくらいの年齢層が「楽しめる」作品って、ほとんど無いのが実情なんだよなぁ...。
まずまずのオススメです。

こけるかもしれないけど、マキノ雅彦監督の次回作、「期待しまひょ」。

おしまい