僕らのバレエ教室/バレエ教習所

本当はレンコンなんて嫌いだ!



  

続けてシネマート心斎橋で拝見したのが「僕らのバレエ教室」。
韓国映画にしては珍しいと表現したら叱られるだろうか。
一応ストーリーはちゃんとあるのだけれど、それよりも、青春のある時間を剥ぎ取ったような、まるでそこに流れる映像を楽しむかのような作品だった。今まで拝見してきた韓国の映画って、無理やりにでも強引にでもストーリーを展開させてオチを付けないと気がすまないようなところがあったけれど、この映画に限っては、そうではない。高校生たちが、いろんなことを経験して、もがき苦しみながらも大人への階段を上がって脱皮していく様子を割りとクールにスケッチしてみせたところが、ボクには新鮮に思えた。
今回の韓流シネフェス中、ボクが拝見した中では一番心に残った映画だと思う。異論はあるかもしれないけど、ある意味「仔猫をお願い」の男性版とも言えるかな。

韓国の高校生活は、三年生の11月に修能試験を受けるためにのみ存在していると言っても過言ではない(らしい)。この修能試験は、日本で言う共通一次(今はセンター試験か)のようなもので、進学を希望する高校生にとって、この試験で何点を取るかによって全ての運命が決まる(らしい)。
そして、その試験が終わってしまえば、2月に高校を卒業するまではまるで腑抜けのような自堕落な生活を送ることになる...。

そこそこ勉強はそこそこ出来るけど不器用で真面目なミンジュ(「god」のメンバー、ユンゲサン)。成績が悪くて親に叱られているドンワン(「王の男」のイジュンギ)、そしてダンスが上手くて大人びているチャンソプ(オンジュワン)。そして、同じ高校に通うクラスメートの女子スジン(キムミンジョン)。こんな高校生たちと、講師ジョンスク先生をはじめとするダンス教室の癖のある面々。
メインのストーリーはミンジュとスジンのロマンス、そしてミンジュの父子関係なんだけど、いろんなエピソードが上手く散りばめられていて、出色の群像劇になっている。
エンディングも、メデタシメデタシのハッピーエンドではなく、春になればどうなるかはわからない。いろんな意味でみんな新しい世界の扉を開けて、それぞれの道を歩き始めるんだなぁ。

ピュアで不安定、そして繊細な青春特有の精神状態が上手く表現されている。
ボクは「どうせアイドル映画やねんから...」と思って観ただけに、正直言って驚いてしまった。若い役者たちの一人ひとりの芝居がもう一つなだけに、こんな群像劇になったのだろうけど、それが良かった。
何がしたいのか、何が出来るのか、何にもわからないのに時がそれを許してくれない。今までの高校生活は、机にかじりついて勉強をしておけば良かった。でもこれからは自分で決めて、自分で道を選んで、自分の足で歩いていかなければならないんだ。
あぁ、ボクにもこんな時代があってんなぁ。懐かしく、羨ましく、そして少し気恥ずかしい。

ボクは、ちょっと投げやりでつかみどころがないスジン役のキムミンジョンが良かったなぁ。調べてみると「淫乱書生」に出てるようですね、楽しみにしておきます。オンジュワンも「ピーターパンの公式」という最近の作品で主演しているようです(これも楽しみ)。ミンジュのお父さんはチンユヨン、この人、次に紹介する「天国からのメッセージ」で全く違う役で出てますね。

観る人によっては、どうもとらえどころがないお話しだと思われたかもしれません。それに、観て面白いとかスカッとするとか、そんな作品ではないですね。でも、良かった。まずまずのオススメだと思います。

あんにょん。