デイジー/Daisy

楽しみに待っていたのに...。



  

だいぶ前から、チョンジヒョンの新作はオランダのアムステルダムでロケしていると伝えられていた。でも、どんなお話しなのかは出来るだけ触れないように努力していた。絶対に観るのに決まっているのだから、楽しみは後に取っておきたいからね。

「アムステルダムの朝は早い」とは、何とも懐かしいフレーズ。
映画のお話しに関係なく、そんなフレーズが頭に浮かぶ。

そんな街の旧市街にアンティーク家具を扱うショップ。ここのオーナーは韓国人で、彼の孫娘ヘヨン(チョンジヒョン)がお店の2階をアトリエにして画家になる勉強をしている。彼女は郊外でスケッチしたり、広場のカフェにやって来る観光客相手に似顔絵を書いている。
そんな彼女が毎朝楽しみにしているのが「フラワー!」という声を掛けデイジーが咲く植木鉢を置いていく男がいること。ヘヨンはその声を耳にすると、慌てて店先に飛び出すのだけれど、男の姿は既になく、店先にはデイジーの鉢がポツンと置かれているだけ。毎朝繰り返されるこの贈り物に、彼女はちょっぴり期待を膨らませている「誰か素敵な男性がいつも自分を見守ってくれている」そんな気がしている。そして、何時の日かその男性が自分の前に姿を現せるのに違いない...。

正直云って、なんとも呑気なお話し。
こんな間抜けなお話しをボクはクビを長くして待っていたのかと思うと、ちびっと情けなくなる。
どうしてチョンジヒョンがアムステルダムにいるのか。そんな素朴な疑問にも全く応えてくれないばかりか、展開されるストーリーに必然性や説得力が全くない(もちろん、ボクの語学力の問題も大いにあるけど)。
“映画のために創られたお話し”が、そのまま展開されるのに過ぎない。そのお話しの中に、まるでリアリティがない、かと云って憧れるような美しいストーリーが展開されるわけでもないしなぁ。
お話しが進むのに従って、ボクの心の中はフラストレーションが高まる一方だ。

少女趣味で夢見る少女を演じるヘヨン(チョンジヒョン)。
血なまぐさいのにファンタジーが好きなナルシストのパクウィ(チョンウソン)。
そして、単に間抜けとしか見えない刑事のジョンウ(イソンジェ)。

この3人の顔ぶれだけを見れば、凄い顔合わせ。それは間違いないのだけれど、幾らスターが出ているかによってその映画の面白さが決まるわけでは決してない。確かにスターは大きな要素に成り得る、しかし、それだけでは決してないのだ。スターが持っている魅力を引き出すようなストーリーこそが、映画の命なのではないでしょうか?
チョンジヒョンもきっと“満を持して”の出演だったのだろう、でもなぁ...。そりゃないやろ。

韓国のお客さんは、割と正直に評価する。
まさかソウルでの上映が、わずか3週間で終了しているとは思わなかった。スターの出演とその話題性でスタートダッシュは良かったようですが、一気に尻すぼみ。ロングで公開されることもなく次々に上映が打ち切られてしまったようですね。
いろいろ検索して調べると、ソウルの北西に位置する議政府という街で上映しているらしい、土曜日の雨の昼下がりに地下鉄に揺られて出かけました。ここは、ソウルの中心地からおよそ1時間。北漢山と水落山に挟まれた町ですね。以前から思っていたのだけど、軍服姿の方が多いので近くに基地か訓練所があるのかもしれませんね。
100名も入れば一杯になる小さなスクリーンに10名足らずの入りとは淋しい限りでした。

チョンジヒョンは「猟奇的〜」以降、何だかどうも...。次の作品がどうなっているのか知らないけれど、大ヒットを飛ばしてイメージが固定化されるのは辛いんだろうな、きっと。出来たら次回は単純に楽しいコメディに出演してもらいたいな。
イソンジェ。この人は役者さんとしてどうなんだろう? どんなお話しでどんな役で出演しても。ある一定の枠の中から出ることはない。すなわちどの役でも同じように見えてしまうなぁ。その殻が破られることってあるのだろうか?
「拳が泣く」でうどん屋のオヤジを渋く好演していたチャンホジンが、この映画の中でもなかなか存在感を示しているのが唯一の救いでしょうか(もっとも、ちょっと意味不明な役柄だけどね)?

あわわと云っているうちに、“超・韓流”のこの大作、日本でも5月には公開される。「頭の中の消しゴム」がヒットを飛ばして、チョンウソンは日本では旬な人ですものね。
正直、あんまりオススメは出来ませんが、興味がおありの方は、スクリーンで、ご自身の目でお楽しみ下さい。

おしまい。