ふたりのベロニカ

ボクには合わなかった



  

渋谷の東急百貨店本店、ここに付属しているBunkamuraという施設にル・シネマという映画館がある。ここと東銀座の銀座テアトルシネマはかなりお上品な映画館だと思う。上映される作品や、館内の雰囲気がお上品なのではなく、ここにお越しになっているお客さんがかなりお上品なのだ。そんな気がするだけなのかもしれないけど、きっとそうだと思う。
最近はロードサイトにシネコンが出来て、普段着につっかけで映画を観るのにそう違和感を持たないようになった。でも、映画を観るのは、ある意味「晴れの日」的な特別の行事であるのも確か。今でも、銀座や有楽町で映画を観るのは特別なんじゃないかな?
着飾っていくのもいいけど、中国の映画で時々出てくる移動巡回上映会のシーン。もちろん野外。暗くなったら村の人が椅子を片手に、広場や校庭に三々五々集まってくる。そんな映画も好きだなぁ...。
上品だとか特別であることと、映画館として快適に鑑賞できるかどうかはまた別の話しで、銀座テアトルシネマはかなり観やすいスクリーンだけど、ル・シネマは正直云って「並」。お客さんが多いときは決して観やすくはないですね。ここでしか上映しない作品が多いんだから、思い切ってシートアレンジの変更を含めた改装を行って欲しいスクリーンだと思うけど、いかがなものでしょう?

で、ル・シネマで続けて拝見したのが「ふたりのベロニカ」。新作ではなく、ニュープリントでのリバイバル上映。
正直云って、ボクには駄目な作品だった。
明確なストーリーが無く、一体何が言いたいのか、伝えたいのか、それがさっぱりわからない。映像も、ベロニカを演じる女優さんも驚くほど綺麗で、その姿を見ているだけでも満足なんだけど、それだけで1時間半はやっぱり退屈してしまう。

ポーランドとフランスで、同じ年の同じ日、そして同じ時刻に生まれた女の子がいた。二人は姿かたちも目の色も同じ。そして名前はベロニカ。
二人はお互いに会ったこともなければ、お互いにその存在を知っているわけはないのだけれど、何故かいつも「誰かに見られている」という感覚のもとに、お互いの存在を意識のどこかで感じていた(らしい)。
声楽家を目指しているポーランドのベロニカは、舞台での役を射止め、初めてのステージに立ったその舞台で唄い終えたそのとき、発作に襲われそのまま絶命してしまう。
その時、フランスのベロニカは、強烈な喪失感に襲われ、自分でも何がなんだかわからないまま大粒の涙がとめどなく頬を伝う...。

そして、謎めいた人形劇師と出会う...。

確たるストーリーがあるわけではないので、それを紹介するのは無駄だ。
これは感覚的な問題で、ボクには合わなかったということなんだろう。おもんないとかしょうむないのではなく、理解の範疇を超えているから、映画の世界に入っていけないし、付いていけない。
もし、このベロニカに感情を移入できる人や、この精神世界(?)にすっと入っていける人なのであれば、とてもいい作品なんだろうな。
91年のカンヌの主演女優賞受賞作。だから、この作品を理解し評価できる人が少なくはなかったということなのでしょう。
関西でもリバイバル上映が行われるのかは不明です。ボクには理解できなかったので、オススメは出来ませんが、興味をお持ちの方はどうぞ。

ようやく、次回から釜山やソウルで観てきた韓国の作品を紹介する予定です。

おしまい。