天空の草原ナンサ

プラスチックの柄杓、一見便利なんだけど...



  

大阪で上映している時はまだ忙しくて、映画を観る余裕はまるで無かった。「モンゴルの映画やけど、観逃し決定やなぁ...」とあきらめていた。
すると、サンフレの応援も兼ねて広島にお邪魔することが決定。「サロンシネマで何かええもん上映してへんかな?」と調べてみると、この「天空の草原ナンサ」を午前中に一度だけ上映している。まるで「ビッグアーチに行く前にこれを観ないと損だょ」と言われているみたいだ。これも何かの縁なんでしょう、早目に家を出てハンドルを握り西へ向かう...。

特にストーリーは無い。
だけど、観ていて心が洗われる。やさしい気持ちになってしまう。そんな暖かい視線を持った作品。

草原に住む遊牧の民。一軒のパオ(移動式住居)。ある一家と羊を中心とした家畜たちが暮らしている。
このパオにバスが近づいて来る。この一家の長女が都会(?)の学校から帰って来た。どうやら普段は都会で勉強をして、休みになると帰ってくるよう。この子の名前はナンサ。小学校の低学年ぐらいかな。
洋風の服を脱ぎ捨て、伝統的な服に着替えながら「こんな勉強をしてきた」と両親に報告する姿が、実にほほえましい。
この家にはナンサの他にも、まだ幼い妹、そして歩き始めた弟がいる。ナンサは弟妹の面倒を見ながら、家の手伝いもする。そんなナンサが燃料になるヤクの糞を集めに行った草原の岩場で見つけたのは...。

ボクは気候が良くて緑の草原が気持ち良さそうなシーンばかりを見ているわけだけど、自然は厳しい。
実際には、羊はオオカミに襲われることもあるし、急な天候の変化で道に迷うと生命の危機すら隣り合わせ。都会でぬくぬくと暮らしているボクには想像もつかない生活がここにはあるんだな。
ボクが普段の生活の中で「自然の中で生きている」と感じるのは、台風が接近したときや地震のとき、それに山の中を歩いているときぐらいで、すっかり意識の外にあるのだけれど、実際は毎日の気温の変化や降ったり照ったりも自然なんだ。ただ、そこそこ克服(?)して、ほぼ同じような毎日が送れるようになっているだけなんだな。そんなことを教えてもらった。

ナンサが見つけて家に連れて帰った仔犬。お父さんは不吉な兆候かもしれないと飼うことを許してくれない。
果たしてナンサとこの仔犬の運命は?

思ったよりもお客さんが入っているのには驚いた。アクションやコメディもいいけれど、たまには心が温まるこんな素朴な映画に触れるのもいいものです。チャンスがあればどうぞ!
サロンシネマは「御贔屓帳」というスタンプカードを発行してくれる。実は一回無料になるだけのスタンプが貯まっていたのだけど、なんと期限切れ(有効期限があるとは知らなかった!)。これはちびっとショック。でも、ここんとこ広島で映画を観るチャンスもなかったから、仕方ないね。次回はこんなミスをしないように気を付けよう。

おしまい。