ALWAYS三丁目の夕日

思わず、自分が歩いてきた道を振り返ってしまう



  

昨年に公開され、なかなか高い評価を受けていた。ロングで公開も続いている。「じゃ、いっぺん観てみようか」と愛知県への出張の帰り道、小雨がそぼ降るなか、名駅南側へ出かけました。

ボクは幼少時代を田舎で過ごしているので、この映画に出てくるような世界とは無縁だった。
今から思うと、もっと粗野で粗末な生い立ち。良く言えばワイルドな環境で育ったわけだ。比較的大きくなってからも、路地裏や公園で遊ぶということはなく、山の中や田んぼや畑のあぜ道を走り回っていた。
その分、家庭内での親子や兄弟ではどっちかというと淡白だった(つまりあんまり面倒を見てもらえなかった)けど、地域にはかなり密着していた(ような気がする)。どこへ行っても素性がばれていて、悪いことをすれば(いや悪いことしかしなかった)即座にバレてしまった。それがイヤなのではなく、そんなものだと思っていた。
この映画とは直接関係がないけど、観ながらそんなことを思い出していた。映画の中でのエピソードを経験した人もしなかった人も、等しくそう思ったのではないかな? もっとも、若い人がどう思ったかはわからないけれど...。

語られる物語りは、毒にもクスリにもならないようなもの。もともと「ビッグコミック・オリジナル」という漫画雑誌に連載されている原作にしてもそうだ。何かメッセージがこめられているのではなく、クスっとしたり、ほのぼのとした気持ちになるような内容。
一応、ストーリーの核は三つ用意されていて、それぞれが絡みながら並列で語られていく。誰が主人公というわけではない。いや、実はこの映画の主人公はこの映画を観ている人そのものかもしれない。

価値観がこの40年のうちに大きく変わったんだな。価値観だけではなく、日本という国に存在している社会が変わった。
この映画を観ている最中、ボクは何故か「誰も知らない」の中で柳楽優弥の鋭い眼差しを思い出していた。あの映画の世界には鈴木オートの社長も悪魔先生もいなかった。ある意味この映画とは対極にある世界が描かれていたのだと思う。
だけど、どちらがいい社会なのか、どちらで暮らすのが幸せなのか、それはわからない。振り返ってみてどうだったのかを語ることは出来たとしても、判断や評価を下すのは難しい。

そんな意味で、この映画が「いい映画」なのかそうじゃないのか、その評価も非常に難しいと思う。だから退屈だと思う方がいても不思議ではない。
ボクは楽しく拝見したけれど、幾つもの賞を独占するだけの出来であったかどうかは、ちびっと疑問が残ります。そう思ってしまうほど昨年は邦画にもいい作品が多かったからね。
ただ、薬師丸ひろ子の演技は良かった。この人、意外なことにしっかり芝居が出来るんですね(失礼かな?)。いい具合に歳を取ったものです、はい。彼女はボクと同時代のアイドルであっただけに、妙に感慨深かったです。

おしまい。