バンジージャンプする/Bungee jumping of their own 

これは、どのように理解すればいいのか...



  

タイトルから、勝手にコメディタッチのお話しだと思い込んでいた。
もう何年か前に買い、埃をかぶっていたVCDを引っ張り出してきて、この日パソコンにセットしたのには理由がある。それはこの作品に出演しているイウンジュが自殺してしまったから。
そのことを知った日、ボクは出張先の広島にいた。翌朝、中国新聞にも日経新聞にもべた記事ではなく、この報道に紙面が割かれていたのには、正直言って驚いた。

このお話しを一体どういう風に紹介すればいいのか、ちょっと言葉が思いつかない。
ストーリーの本筋は理解できる。一途な恋を経験した人であれば、誰だって似たような思いを抱くだろうし、実際に起こるかどうかは別にして、そうあればいいなと思うだろう。
でも、ボクが思うにそれは男女間のことであって、ボクにはこの映画で展開される事象は「理解不能」。
ラストで涙ぐむのか、げげっと唸るのか、それとも笑い飛ばすしかないと思うのか。それは観る人次第なのでしょう。

ある意味、韓国映画の王道(?)を行くようなストーリーではある。
高校で教師を勤めるイヌ(イビョンホン)は、生徒からの人望も厚く、人気者だ。家庭では子供が一人いて幸せで良き夫、良きパパ。そう、何も問題がない日々を過ごしている。そんな彼にも、苦い青春時代があったことが徐々に明らかになっていく。しかし、思い出す過去とは、なんと甘美なものか。画面を見つめているこちらの目尻が思わず下がってしまう。
イヌはある雨の日、傘を差さずに出てきた女性に傘を差し出す。バス亭までの道を一緒に歩いただけで恋してしまう(だってその女性はイウンジュなんだもの!)。彼女テヒが違う学部に通う学生だと知ったイヌは、猛烈にアタック(その一途さは羨ましいほど)。そして、二人は愛し合うようになる。
が、二人の関係はあっけなく終焉を迎える。
イヌの入隊が決まり、指定された入営地へ向かう日。彼はソウルの南にある龍山駅のホームで彼女を待っている。そのホームでは別れを惜しむ情景が幾たびも繰り広げられ、そして日が暮れていく。ベンチには取り残されたイヌの姿が...。その日を境にして、イヌはテヒと会うことはなかった。

イヌの回想シーンは、この映画の前半部分に散りばめられ、観る者をうっとりさせる。それほど、前半のイビョンホンとイウンジュはいい。だが、この映画の本筋はイビョンホンが訳もわからないうちに恋人に去られてしまうという「悲恋」ものではない。
後半に入り、前半に入念に配されていたイヌの教師としてのエピソードが巧みに生かされながら意外な展開を見せる。
その意外さが最大のポイントではあるけれど、ここでは「お楽しみ」としてとっておきます。
幸い、幻の作品でもなんでもなく、もう少しすれば日本語字幕付きで堂々と劇場公開されるのですから。気になる方は、ご自分の目で、感性でお確かめください。

しかし、イウンジュはなんとも陰があるとうか、幸薄い女性が似合っている。それとも、これは積み重ねの結果なんだろうか?
今振り返って見ると「菊花の香」でチャンジニョンが演じたヒジェの役をこのイウンジュの演技で観たかったような気がします。
もう何を言っても彼女は帰って来ない。ご冥福をお祈りします。

おしまい。