第7回・輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞

すっかり遅くなりましたが、ようやく発表です



  

2005年に映画館などで拝見したのは170本。DVD、VCDでも13本見ています。これらは延べの数字で、何本かはダブっているし、何本かは複数回スクリーンで拝見している作品もあります。
秋までは順調に本数を伸ばしていたのですが、10月を過ぎてからめっきり映画館から足が遠のいてしまいました。忙しかったのが一番の理由ですが、映画に対しての執着がやや薄らいでいるのかなとも思います。健康であったり、元気であるからこそ映画も楽しめるわけで、くたくたになっているのに、そこから鞭打って映画館へは行けなかったということでしょうか...。

今後はひょっとしたら今までのように本数を観ることは出来ないかないかもしれません。貴重な時間を使ってスクリーンへ向かうのですから、厳選体制ですね。でもご存知のように、映画は人のうわさや前評判はあまりあてにならないものですし、その映画と出会う瞬間の気持ちや体調、環境などによって大きく左右されるものですからね。他の人は「おもんない!」と思われても、ボクにはかけがえのない作品になるかもしれないし、その逆だってありえます。だから、本当はせっせと映画館へ行き一本でも多く拝見するしかないのです。それは十分承知しているのですが...。

さて、2005年の特徴のは、映画祭的な特集上映によく足を運んだことと、ソウルやその周辺など韓国でもたくさん拝見したことでしょう。それにしても、昨年に引き続き韓国の映画をたくさん観ました。延べ74本(DVD、VCD含む)ですから、これはちょっと異常ですね。それだけ上映された作品も多かったし、観る機会も多く作ったのも確かです。これらの傾向は、多分2006年以降も続くでしょうね。それはそれで楽しみです。

前置きはさておき、2005年に拝見した作品を振り返って、各賞を発表し、そして最後に皆さんがお楽しみにしている(かもしれない)「第7回・輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞」を発表したいと思います。まぁ、もちろん相変わらず何の権威もありませんが...。


それでは、まずは部門賞から

◆欧州賞…「キス・オブ・ライフ」
ここ数年、上映される欧州の作品は本当に粒ぞろい。「恋に落ちる確率」「靴に恋して」「やさしい嘘」「キス・オブ・ライフ」「海を飛ぶ夢」「アイ・アム・デビッド」「エレニの旅」「Dear フランキー」「ライフ・イズ・ミラクル」「メトロで恋して」「灯台守の恋」などなど、列挙するだけでも大変ですね。ほとんどが大人のムードが漂う作品ばかりで、いわゆる軽い作品は無かったような気がします。
そんな中でもボクが選んだのは「キス・オブ・ライフ」。思いっきり地味な作品で、ほとんどプロモーションも無かったように思います。でもこの映画の中で語られるお話しはボクの胸に突き刺さりました。腫れた惚れたばかりが恋ではない。人生にはいろんな恋があり、そして、恋をするのは機械でも何でもない、実は人間なんだと思いっきり教えられました。チャンスがあれば、是非一人で静かにご覧いただきたいですね。
また「恋に落ちる確率」。確かに設定はかなりゆるくて、あやふやな部分もあるのですが、観るほどに酔ってしまう、そんな不思議な感覚のお話しでした。こちらは、次点とさせてもらいましょう。

◆米国賞…「オペラ座の怪人」
「オペラ座の怪人」「Ray/レイ」「ビヨンドtheシー〜夢見るように歌えば〜」「きみに読む物語」「ミリオンダラー・ベイビー」「バタフライ・エフェクト」「チャーリーとチョコレート工場」など、こちらももちろんいい作品が目白押し。ボクはいわゆるハリウッドの大作はほとんど拝見しないのですが、それ以外にもこんなにいい映画がたくさんあるとは、驚きを通り越しています。
ここで選んだのは、いろいろ不満が無いわけでもないのですが「オペラ座の怪人」です。何も目新しいものはない。でも、圧倒的な迫力の音響には、ただただ震えるばかりです。もちろん、あの大音響にフィジカル的にも震える、でも心も震えました! もちろんサントラも買ったのですが、家やカーステレオではあんなに大きな音では聴けません。やっぱり音響設備が良い劇場でもう一度お目にかかりたいですね。
「チャーリーとチョコレート工場」も音楽が良かったですね。恐ろしくお金がかかったセットに、ちびっとうっとりしてしまいました。こちらを次点にさせていただきます。

◆チャイニーズ賞…「ベルベット・レイン」
メインランドの作品では「故郷(ふるさと)の香り」「安陽の赤ちゃん」。香港では「インファナル・アフェアIII 終極無間」「恋の風景」「PTU」「ワンナイト・イン・モンコック」「ベルベット・レイン」「頭文字〈イニシャル〉D THE MOVIE」などなど...。ここ数年になく粒揃いです。全く期待せずに観た「ベルベット・レイン」にはしびれた! もちろん「無間道」シリーズもいいんだけど、「ベルベット・レイン」にはわずか二時間足らずの中に凝縮された密度の濃さがありました。う〜ん、やっぱり香港映画はまだまだ凄い可能性を秘めている!

◆日本賞…「美女缶」
正月早々に偶然観た「美女缶」には驚きました。それ以降、邦画も絶好調で「火火/ひび」「パッチギ!」「ニライカナイからの手紙」「村の写真集」「サマー タイムマシン ブルース」「帰郷」「運命じゃない人」「リンダ・リンダ・リンダ」そして「NANA」に至るまで、ほとんど全ての作品が見応えがある出来でした。いずれも、大手の映画会社の作品ではなかったかもしれませんが、日本の映画も素晴らしい! そして選んだのが「美女缶」。何となく行った十三のナナゲイで、偶然に出会ったビデオ作品。全くのノーマークながら、着想が良くしっかり練られたお話しでした。この筧監督の次回作はどうなっているのかな? ものごっつい楽しみです!
「運命じゃない人」も秀逸でした。これを次点としましょう。2005年は本当に邦画が大豊作の一年だったのではないでしょうか。

◆韓国賞…「ワイキキ・ブラザーズ/WAIKIKI BROTHERS」
これだけの本数の韓国映画を観たのに、何故か心が震える作品には出会えなかったような気がするのは不思議です。観た直後には心に染み入ったように感じた作品もあったのですが、こうやっ振り返ってみるとそうでもない。ひょっとしたらボクの感覚がおかしくなっているのかもしれないし、単に目が肥えただけなのかもしれません。今後も、せっかく上映してくれているなら観るとは思いますが、あんまり多大に期待をするのは駄目かもしれませんね。
そんな中でもいいなと思ったのは「英語完全征服」「花咲く春が来れば」「拳が泣く」「人魚姫」「マラソン」「ライターをつけろ」などでしょうか。
で、選んだのがDVDで鑑賞したのでいささか反則かもしれませんが「ワイキキ・ブラザーズ/WAIKIKI BROTHERS」。イオルとパクヘイルがとってもいい味を出しています。ボク好みのノスタルジックでセンチメンタルなストーリーに加えて、淡い希望を感じさせてくれるラストが素晴らしい。日本語字幕付きで上映されるチャンスがあれば是非拝見したいですね。
今年の最後に観た「王の男」は、字幕付きで拝見するとガラっと評価が変わる可能性があるので、2005年では“次点”としておきます。

その他の国の作品としては「ビハインド・ザ・サン」「火星人メルカーノ」「ウイスキー」の南米の作品も印象深かったですし、タイの大ヒット作であったという「フェーンチャン ぼくの恋人」もとっても良かったです。

◆男優賞…シュクラン・ギュンギョル
きっと“この人、誰?”と思われるでしょう、それほど「少女ヘジャル」は地味な作品。でも、その中に詰まっている内容は濃い。何も起こらない。でも語られるのはセリフだけではありません。それに演技とはアクションや身振りや手振りなのではなく、まさしく顔のちょっとした動きの表情一つで決まるのだと教えてもらいました。ラストの喪失感には、ボクの心も痛みました。このトルコの男優にボクはもう一度出会えるのかすらわからない。でも間違いなく深く心に残る俳優さんです。残念なことに彼は2002年に鬼籍に入られているようです。残念です。

◆女優賞…田中裕子
今年も映画を観ながらよく頬を濡らしましたが、「火火/ひび」ほど豪快に泣いた作品もなかったかもしれません。お話しがいいのももちろん、何よりも田中裕子の演技にしびれました。この人、やっぱり凄いです。今更ボクが彼女に女優賞を贈るのもおこがましい気もしますが、「いつか読書する日」での演技も含めて田中裕子さんを女優賞に決定します。

◆行ってみたい都市大賞…ウォンカのチョコレート工場
「チャーリーとチョコレート工場」の舞台になる秘密の花園。ここでは、泉からチョコが湧き出し、チョコの川を舟で渡る。そしてリスたちがナッツの検品をしている。こんな素敵な場所はここ以外にまずないでしょう。燃え出してしまい治療を受けていたセルロイドの人形たちはもう元気になっているかな? それに何よりもこの工場へ行けば...。そうです、ウンパルンパに会えるんだ!

◆特別賞…「ニライカナイからの手紙」
特別賞には「ニライカナイからの手紙」。大阪での上映を観逃してしまい神戸まで追いかけて行ったかいがありました。お話しもさることながら、主人公の風希(ふうき)を演じた蒼井優が無茶苦茶良かったです。

◆大賞次点…「パッチギ!」「ワンナイト・イン・モンコック」
邦画からは「パッチギ!」。この作品は物語りもさることながらヒロインの沢尻エリカが良かったですねぇ。70年代の世相、在日の問題などを背景にして、甘酸っぱい青春物語として大成功しています。
香港の「ワンナイト・イン・モンコック」も凄いお話でした。少しわかりにくい部分もあるのですが、大陸から来たスナイパーがこれまた大陸から出稼ぎに来ている娼婦と過ごすことになってしまった旺角(モンコック)での一夜を大胆にかつ緻密に描ききっていました。香港は中国だけど中国ではないという現実。さまざまなものを背負ったままその香港へやって来る若者たち...。難しく考えなくても面白いので、是非ご覧になって「香港映画も捨てたもんとちゃうなぁ」と見直していただきたいです。

ぱんぱかぱ〜ん! お待たせしました!

◆第7回・輝ける、偽・ジェルソミーナ通信大賞…「ミリオンダラー・ベイビー」
正直言って、2005年の大賞はずいぶん迷いました。飛び抜けてこれやという作品はなかったものの、高いレベルで肩を並べる佳作が多かったからです。
そんな中で悩みぬいて選んだのが「ミリオンダラー・ベイビー」。
フランキーが最後に決断したことが正しいのかどうかはわからない。でも、正しいこととは何なんだろう? 正しいかどうかは問題ではなく、マギーが幸せだったかどうかが大事なのかもしれません。それに、この作品、予告編も良かったと思います。
ショーアップされたところがなく、ほどよく抑制され、じわじわと心に染み入るお話しでしたね。スクリーンを前にして頬を濡らした作品は少なくありませんが、この作品ほど静かに泣いたことはありませんでした。ハリウッドは、アクションでもコメディでもなく、こんなヒューマンドラマをまだ撮れるんだな、それがちょっとした驚きもありました。ボクの評価とアカデミー賞が同じなのも珍しい。メジャーな作品なのでご覧になられた方も少なくないとは思いますが、今後もスクリーンで上映されるチャンスはあると思います、その際は是非どうぞ。


2006年がスタートしてもうひと月近くも過ぎてからの発表で、いささか間抜けですが、それはご勘弁ください。
皆さんにとって2005年はどんな一年だったのでしょうか? たくさん映画をご覧になられたでしょうか?
そして2006年はどんな年になるのでしょう? 
多くのいい映画に出会い、泣いて笑って楽しみたいと思います。冒頭にも書きましたが、ボクはそんなに本数は観られないかもしれません。それでも出来る限り時間を作って観に行くつもりです。いつまで続くかはわかりませんが「偽ジェ」も引き続き書いていくつもりです。2006年もひとつよろしくお願いいたします。

しょうむないことをつらつらと書きなぐっている「偽ジェ」では、皆さんからのお便りを何なりとお待ちしております。
BBSの「けんちゃな帳」へ、トップページの「contact me」から直接メールをご送付いただく、あるいは別館の「杭州飯店 ヴィラ二号楼」にコメントを書き込んでいただいてもOKです。お気軽にお寄せ下されば、出来る限り対応させていただきます。

おしまい。



◆◆ 輝ける、偽・ジェルソミーナ大賞 一覧 ◆◆
大賞 男優賞 女優賞 行ってみたい都市大賞
第1回(99年) 八月のクリスマス アリ少年
「運動靴と赤い金魚」
クリスティーナ・リッチ
「バッファロー66」
テヘラン
「運動靴と赤い金魚」
第2回(00年) 初恋のきた道 ホック
「フォーエバー・フィーバー」
スー・チー
「玻璃(ガラス)の城」
粟国島
「ナビィの恋」
第3回(01年) 不思議惑星ギン・ザ・ザ 朱旭
「こころの湯」
レニー・ゼルウィガー
「ベティ・サイズモア」
フィレンツェ
「冷静と情熱の間」
第4回(02年) 悪い男/Bad Guy ゲンとジュン
「able/エイブル」
宮沢りえ
「たそがれ清兵衛」
キューバのバス停
「バスを待ちながら」
第5回(03年) 一票のラブレター ティモシー・スポール
「人生は、くもりときどき晴れ」
チョンジヒョン
「猟奇的な彼女」
キシュ島
「一票のラブレター」
第6回(04年) 父と暮らせば 柳楽優弥
「誰も知らない」
寺島しのぶ
「ヴァイヴレータ」
LAのゲイバー
「コニー&カーラ」
第7回(05年) ミリオンダラー・ベイビー シュクラン・ギュンギョル
「少女ヘジャル」
田中裕子
「火火/ひび」
ウォンカのチョコレート工場
「チャーリーとチョコレート工場」