下流人生〜愛こそすべて〜

チョスンウは熱演だけど...



  

「マラソン」で韓国の映画賞を総なめ(?)したチョスンウの主演作。
ボクは以前にDVDで鑑賞しています。字幕があるのとないのでは、ずいぶんと印象が変わってしまうことも多いのだけれど、この作品に関してはそんなに変わらなかったような気がします。それは別にボクの語学力が向上したとかそんなのではなく、単に心情の機微が余り問われないストーリーだからですね。

前回も思ったことだけど、このお話しを楽しもうと思うと、韓国の近現代史に通じていなければ苦しい。すなわち、1950年代以降のソウルの日の当らないアンダーグラウンドを生き抜いた男の半生記が描かれているからだ。そのバックグラウンドが理解できていないと、わかりようがない。
コメディタッチではなく、シリアス路線だけに、チョスンウが演じるテウンに同化出来るか、憧れるか、あるいは感情移入しないとこの映画は面白くともなんともないと思う。でも、ボクにはちょっとな。それは苦しい。

まっとうな営みを続けてきた人が、運命によって波乱万丈の人生を送らざるをえないのであれば、それはそれでいい。でも、ヤクザな人生を選択したのであれば、それを大真面目に見せてもらっても、ボクとしてはちょっと戸惑うばかり。
この題材を扱うのであれば、コメディでいくのか、それとも色恋沙汰を練りこんでいくか、いっそうのこと任侠路線でいくのか、もう少し変化球が欲しかったな。

監督は、テウンの姿を通じて、民主化される前、韓国を牛耳っていた軍事政権のがいかに腐敗していたかを描きたかったのかもしれませんが、それが成功しているようには思えませんでした。それとも、ボクの歴史認識がまだまだ足りないのでしょうか...。

ちょっと自信はありませんが、ところどころカットされているような気もしました。上映時間を調べてみると5分ほど短くなっているようですね。
日本でも「下流社会」(三浦展 光文社新書 ISBN:4334033210)がベストセラーになっているようです。上流人生に乗り遅れたあなた! この映画は観ないといけないのかもしれませんね(そんなこともないか)。

おしまい。